ゆれる人魚

アグニェシュカ・スモチンスカ監督(女性)、2015年作。ポーラン映画。

 

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 完成度が低いのか高いのかよく分からない映画なのは、ポップな映像のせい?

テクノ風の音楽としっかり設計された美しい色彩とセイレーンと人魚姫の骨格を持った物語がナイトクラブとその楽屋裏で弾ける。

 

たまにそのポップな映像からはみ出すものがあって、ゴールディンとシルバーという二人の人魚が歌うと、ただ、ドタドタと踊るおじさんが映し出される。決してセイレーンに取り憑かれている風ではなく確かに異様ではある。

 

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ゴールディンとシルバーは少女のマーメイドで、魚の部分が異様に長くてケモノっぽいのは、歌で人を誘惑し食い殺すから。二人の歌はとても可愛いくて、何か、女性にとって心地よいエロスがこの二人の人魚にはある。

エロスというより少女時代の思い出のような、胸を触りっこしてきゃあきゃあ言ったときのような、うまく言えないけど、エロスに近い何かがある。たぶん、男性は人魚たちにあまりエロスは感じないのではないかと思うけど。わからないけど。

 

二人の人魚を連れてきたミュージシャンの3人は、彼女たちの怪物性を思い知らされ、おまけに、シルバーが給料を貰っていないと怒るので、バンドのリーダーみたいな中年男が二人を殴って、川に捨てる!戻ってきたゴールディンは仕返しをする。中年男の手に噛み付いた。(そそ。何ヶ所かグロいシーンがありますが、そこは目をつぶります😁。まあ、男性のパワハラ的、メタファーになってます。)

 

シルバーは髪が赤っぽい金髪で魚の部分が青みがかったグレー。ゴールディンは黒髪に尻尾部分が金色がかっていて、二人にものすごく色が似合っている!(美しいです!うっとりする色彩のシーンがたくさんあります。)

 

シルバーアンデルセンの人魚姫なので、若い金髪のミュージシャンに恋をして、尻尾を切り落とすわけで、そして、やはり、金髪男は別の女性と結婚してしまう…。泡になってしまうから、金髪男を喰わねばならないけど、シルバーはできなかった。

 

決して、自分のアイデンティティを捨てないゴールディンは、金髪男の喉に噛み付いて殺してしまうけど、わたしはその復讐がよくわからない。男、関係なくね?

血だらけの顔のゴールディンは泣きながら海に帰っていくのだけど、あの泣き顔は喪失と挫折と、何もかも絶望的に悲しい。

これが大人になるということならば、とうの昔に大人になっているわたしが、いやだと喚いていることについては、我ながら理解したくない…。

 

 

フロリダ・プロジェクト真夏の魔法

ショーン・ベイカー監督、脚本、製作。2017年作。

 

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「う、うまく言えない…」びっくりしているジャンシーの前で、ムーニーは泣き出してしまう。 なんとか口元を手で押さえようとしているのか、ムーニーのちっちゃい手は半ば口の中に入っている。

わたしは、小さい女の子のこんな泣き方、泣き顔、初めて見た…。可哀想でたまらない。

そしてラストに突入。なんて粋な終わり方…!

 

この映画は、最貧困層が暮らすモーテルを舞台に、マーニーと母親、子供達の夏休みの日々を追った作品。

どうやら、低所得者住宅のようなものにも入居出来ないらしく、一週間決めのモーテルで暮らしているらしい。どう考えても、モーテル暮らしは、アパートなんかより高いと思う。定職についてないからアパートが借りられないのか?

 

マーニーの母親ヘイリーは20歳そこそこらしい。マーニーが7歳だから、14、5歳で彼女を生んだんだと思われる。

 ウィレム・デフォーがモーテルの支配人なんだけど、彼がいろいろと子供達の事やみんなのことを心配していて、あったかい!

子供達が遊んでいるところに変なお爺さんがやって来て、そうしたらペンキを塗っていたデフォーが梯子から身を乗り出して様子を確かめたもんだから、ペンキの缶がバチャーンとおこっちて。アスファルトにぶち撒かれて。(あれどうやって落とすんだろ?)

 

デフォーはヘイリーが売春し始めたことに気がついて、それとなく忠告したりするんだけど、ヘイリーは、その優しさがわからない。

彼女は、娘とおんなじ子供。子供好きの無責任なベビーシッターでしかない。

娘の友達スクーティの母親は、食堂で働いていて、何かとヘイリー親子を助けていたのだけど、子供達の悪事以来、児童保護局に目をつけられることを恐れ、ヘイリー親子と関係を断つ。つまり、ヘイリーはそうゆう事にも頭が回らない。

 

マーニーと仲間の子供達の夏休みは、大人からほったらかしにされているわけで、そりゃあもう、うひゃーつう悪ガキぶり。けれど、ちらほらと悪さに気がついた親は叱ったり罰を与えたりということをしている。まったくのほったらかしはマーニーだけ。

 

 まあ、ラストはああして終わったけど、結局、マーニーは里子に出され、ヘイリーは、職業訓練かなんか受けて、きちんと働くようになって、そいで、マーニーを迎えにいくと。それしかないだろうなあ、と見ている間中、そんなことを考えてた。しかし、あのヘイリーがどこまで子供ために頑張れるのか?かなり不安。

 

 

ヒックとドラゴン

 ディーン・デュボア、クリス・サンダース共同監督。クレシッダ・コーウェル原作

 

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 製作はドリームワークスアニメーションなんですが、パラマウントとの契約打ち切りの後、20世紀フォックスに移ったりなんだり、ごたがたしており、2作目は日本で劇場公開されませんでした。なんだかなぁ…。

 

ごたごたといえば、話は逸れるけど、片渕須直監督、一作目の「アリーテ姫」が見たくて探してみたけど、みつからぬ。この映画を見た心理学者が「精神的トラブルからの再生、回復そのものだ」と言ったとかで、片渕さん喜んでおられた。彼がジブリを辞めた時は、大きな挫折を抱えており、その後10年間くらい鬱々としていた時期にアリーテを製作したらしい。作りながら救われた、というような事を彼は書いておられる。

 

 

すげー、話が飛びました…。

ヒックとドラゴン」に戻ります。

 このお話は、ヒックという落ちこぼれのバイキング族の少年とドラゴンの友情物語です。

 

もの言えぬ生き物とそれを理解する少年。もうもうこうゆうのに弱いです。

ヒックがピンチの時ドラゴンが駆けつけるのですが、それが何故か、飛びあがらなくて(どっか見逃してる?)、一生懸命、崖を駆け登ってゆく。懸命に駆けていく。そいでやっと飛ぶんだけど、その懸命さってのが、いじらしくて、愛しくて、可愛いのよ。

 

ドラゴン、可愛いのよ…。ドラゴンに乗って空を飛ぶシーンは、あれね、わたし絶対、夢で経験してるわ。

 

クライマックスの戦闘も迫力があって、(一体、どうやって情報を共有したんだ?) 全ての大人のバイキングたちも事情がわかって応援してるし、なら、なぜ、ドラゴンがヒックを助けた時に、理解しないんだ、という疑問は残るけど、ともかく、楽しい一級品のアニメでした。