ブルーに生まれついて

ロバート・バドロー脚本、監督、製作。 ジャズトランペット奏者、チェット・ベイカーを描いた映画。

 

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 チェット・ベイカー役はイーサン・ホーク

イーサン・ホークとチェット・べイカーが混じり合ったかのような魅力。

 

監督はイーサンを選んだ理由について「私は、闇を抱え込んだジャズ界の暗いスター、というステレオタイプを選択しない俳優に演じてほしかった。」と言っている。また、「私はイーサンに自分を出すように促した。」とも。

 

イーサンは監督の注文通りの演技をしたんだなと思う。これがどういうことかというと、チェット・ベイカーはヘロイン中毒の廃人のような人物で、よくドラマや映画でみるジャンキーの悲惨さ、鬱陶しさ、惨たらしさ、をすべてもっている。

そうした(あるある系)を免れている映画だということ。(わたしは、チェットベイカーの映画だ、とわかったとき、悲惨だったら見るのをやめようと思っていたんだけど、最後までイーサン・ベーカーの魅力に引きづられた!)

 

お話は主に、チェットが麻薬の売人から暴行され、口や顎に再起不能といわれる重傷を負って、そこから再生するまでを見せている。

 

登場人物は全て実在するけど、一人だけ、チェットに寄り添う恋人のジェーン(カルメンイゴール)だけは架空の存在。

 

 実際にチェットは当時マイルス・デイヴィスと肩を並べる人気ミュージシャンだったけど、その人気というのは、やはり白人のジャズマンであったという、(推測するに、例えば、モンゴル力士ばかりになった相撲界に、ちょっとだけ劣る日本人力士、それもイケメンが入ってきたような感じ)だったのかなあ、と思う。

で、チェットがマイルスに怯えてる様子が出てくる、また、マイルスも俺たちの方が上だと思っているから、遠慮会釈なくモノを言う。(たしかに、マイルスは天才ですよ、でも、どっちかCD買えって言われたら、チェットかなあ、カンタンだし…。専門的な評価は低くても、当時、彼のレコードは売れた。それに、彼のボーカルは女性みたいでセクシーなの。)

 

架空のジェーンが、「あなたがヘロインに手を出したらわたしはすぐわかるわ。」

「あなたが頬に手を当てる仕草でわかるわ」とチェットに言うので、わたしは「なんのこっちゃ?」と思っていた。(頬かどうか確かじゃない)。

そしてそれは、最後にはっきり理解させられる。

あんな綺麗な●●のシーンは見たことがない!

トランペットの音色が重なる…。これこそが切なさというものであると私に刻まれる。

 

 非常にスタイリッシュな映像でした。イーサンはまるでほんとうにトランペットを吹いているみたいです。イーサンが実際に歌も歌っています。下に本物を貼っておきます。

 

 

CUTIE HONEY–TEARS

w ベアトリス・マルタンをヘビロテ。

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2018年のアルバムなんだけど、フランス語のながーーーいタイトルは「En cas de tempête, ce jardin sera fermé」。一曲貼ってみる。

Prémonition

Prémonition

  • Cœur de pirate
  • フレンチポップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

 

Asai Takeshi、ヒグチリョウ共同監督。2016年作。

Netflix

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原作漫画は永井豪

デビルマン」の後半くらいかな、「あれ、永井豪ってすごい」って思ったんだ。なわけで、この映画を見たわけ…。

 

キューティハニー」は2004年に庵野秀明が「ハニメーション」という撮影技法で実写を撮って、コケてる。もう一つの実写版もコケてる。

 

で…この映画、プロットはわたしは好きだよ。どんだけ、目新しさがなくても、使い古しでも、プロットはイイと思うんだ…。

 

つまり、日本は環境汚染のせいで居住可能域を上空に求め、高層ビルの上層階は快適で、地上は汚染された雨が降るし、下層に住む人々は、病気がち。

如月博士は死んでしまった娘の心を持つAIを作って地上に逃し、地上では抵抗勢力がもう一つの管理AIジル率いる治安ロボットソドムと戦っている。

ん十年後、如月瞳ことキューティハニーはソドムと戦いながらジルの追っ手をかわしながら生きていた…。

 

おもしろいしょ?

でも、監督は、映像はセンスあるけど、残りを忘れちゃってるつうか、カメラワークで語るってことをないがしろにしてるつうか、上手く言えないけど。

 

AIの瞳が、小さい時に彼女を拾ってくれたおじさんとおばさんが殺された事を聞いたシーン。抵抗勢力のリーダーが「ふん、所詮はAIはなんとも思わないんだな!感情が無いから!」つうんだけど、もう瞳ちゃんはさんざ、感情があるとこを見せてんだ!少女がソドムに捕まったお父さんにしがみつくとこ、おじさんおばさんとの楽しそうな食事、もう見せちゃってんだ。

そいで、ワザワザ、抵抗勢力のリーダーが瞳ちゃんには感情がない、ことを説明して、そして、瞳ちゃんが写って、泣くわけ…。

 こういう首を絞めたくなるような幼稚なシーンが2、3カ所あるんだ。

 

ん…これ、監督のせいなんだよね。 

 

そいで、最後だけど、(ネタバレするし)、、少女の心を持ったAIである瞳ちゃんは、決断するんだ、自分が犠牲にならねば、と。

でもさ、少女なんだ、子供を産んだ女ならいざ知らず、まだ少女だから、怖いんだよ、それで、振り向いて早見青年に言うんだ「いつもみたいに笑って」と。

ここを書いている時脚本家は泣いたと思うのね、わたし。泣かなくても、まあ、そういう大事なシーンなのに、見てるわたしは、はよせんか!と思ってたもんね!下で人が死にそうになってるから…。

監督がちゃんと演技指導して上手く撮れば、良いシーンになったんじゃないかなあ、と思うよ。

 

ま、で、見終わってから彼女が犠牲になって汚染空気を全部除去したけど、又、溜まるじゃん?これについてはどうすんのかな、と。(脚本家も細部詰めてないんだよね、あっちゃこっちゃ。)

 

ヒグチリョウって監督は、VFXでいろんな映画に関わってきて、CMとか撮ってた人みたいで、Asaiって監督も、CMとか短編映画撮ってる人みたい。

 

もうちょっと、高層と下層に別れた世界観ってのを表現してもらいたかったけど、きっとお金がなかったんだよねえ。 

 

 

 #訂正

ブログを始めたのはニャンがいなくなって半年後だった。なーにが数ヶ月。でも、いまでも、数ヶ月しか経ってない気がする。

多分、他にも色々間違ってると思う、誤字脱字含め。すみませぬ。でも、教えてくれてもいいんだよ。言い間違いとか、ずっと、「目下」を「めした」と読み間違えていたことが発覚。くぅ…笑われた。

 

 

  

マイケル・ムーアの世界侵略のススメ

マイケル・ムーア監督。2015年作。 ドキュメンタリー映画

 

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間違えて見ちゃったのだ!(くぅ…)

「華氏119」って言ったらパッと出てきたから、「お、あるんだ」って信じちまうよねっ!で、最後になって(ホントに最後になって)気がついた…。

 

この映画は、マイケルムーアが世界各国の福祉政策がどうなっているのか、調べて回るつうもので、イタリア、フランス、ドイツ、スロベニアポーランドチュニジアフィンランドノルウェー、そして最後はアイスランド

 

それで、構成にすごく味がある!

マイケルさんは、負け続きで反省した各軍のトップから、各国へ派兵されるんだ。良きものを侵略して奪ってくると息巻いてる。そいであちこち行って「ほへー、すっごい良い事ですね」とか言ってるんだけど、だんだんみんなに言われるんだ、「アメリカから学んだんですよ」とか「アメリカのアイディアですよ」と。

そして、彼は言うわけ、「アメリカは福祉の先進国だったんだ。仲間同士、助け合おう!アメリカはそれができる国なんだ!」ま、大意はこんな感じ。で、オズの魔法使いジュディ・ガーランドが出てきて、赤い靴をカツカツと鳴らして大円団を迎える。

 

一番最初に行ったイタリアがもう可笑しくて…ベタベタしているカップルばっか撮って、「やあ、イタリア人て皆んなセックスしたばかりって顔してるなあ」ってのうのうとして言うんだけど、確かにイタリアって愛で全ては回るみたいなイメージがあるわけで、ここら辺はすごくユーモラス。

 

 面白かったのが、刑務所の話。

ノルウェーは、教育刑みたいな制度で、死刑はなくて最高でも22年だったかな?で、これもアメリカに習ったと。アメリカの憲法に「重い罰を与えない」という文言があるそうだ。

ずっと面白く見ていられるのだけど、何かアイスランドは雰囲気が違う。そのせいか分からないけどこの辺りでとても疲れが出てくる。

 あと、やっぱり、ドイツの児童教育でジェノサイドについて教えられる子供の顔は胸がつまった。

 

ムーアは、要するに、懐かしの「大きな国家」保護主義政策だった頃のアメリカを懐かしんでいる。

しかし、今は、世界中が「小さな国家」でやっていくしかなく、つまり、保護主義的政策が成り立たなくなっている、という本を昔、読んだ。

ムーアは軍事費を削れ、刑務所の莫大な費用を抑えろ、ノルウェーというお手本があるじゃないか、そう言っていると思う。

 

けれど、彼が紹介したヨーロッパの各国は、経済が立ち行かなくなっていたり、移民問題で揺れていたり、実は大きな困難を抱えてもいるが、ムーアはそこら辺は華麗にスルーする。

 

頻繁に他国の人々から拾い上げていた「困っている人がいたら助けるのが当たり前」と言う言葉は、彼が、もっともアメリカに思い出してもらいたいことの一つなんだろうし、最後の華やかな希望あふれる終わりの底流に郷愁が漂う。