うめざわしゅん

 腹にずしんと響く漫画だ。

 

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 ガチラノさんの感想が良かったので、読んだ。

 

表題作の『パンティストッキングのような空の下』は三上とヒロのコンビが面白かったけど、なんといっても『唯一者』がズンとくる。

 

 この漫画です👇

パンティストッキングのような空の下

パンティストッキングのような空の下

 

 

昔、何かで読んだ。

「心中しようとする男女はセックスをしない。セックスをする時は、まだ、生きたいときだ」と。

 

この漫画の根っこにはタナトスが横たわっている。

 けれど、『パンティストッキング……』に溢れているリピドーは、生きたいってことだ。

登場人物たちは幸せになりたくてもがくけど、まったくどうすることもできない…。

 

 そして、この短編集の最後の『唯一者」。

主人公の男は昔、幼女にイタズラした元犯罪者。

彼は、大人の女では勃たない。

 

彼は、絶対的な孤独感の中にいる。

 

「生まれてこないで済んだなら、それが一番良かった」

「どこにも属せない」

 

 覚えがある感覚…。

 

どっしょうもなさ、のどまんなか。

 

『唯一者』の主人公は街行く人びとを見る。

ひとひと、ひと。

彼らはそれぞれに孤独で苦痛を抱えている。

 

主人公は死なずに家に帰った。

 

 

ファースト・マン

デイミアン・チャゼル監督、 ジョシュ・シンガー脚本、2018年。

 ライアン・ゴズリングクレア・フォイ

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 ニール・アームストロングの伝記 『ファーストマン、ニールアームストロングの人生』を原作とした伝記映画。

 

むかし、宇宙飛行士の、その後、とかの本を2冊くらい読んだ。

だから、アームストロングがどういう人だったとかのイメージはあったんだ。

どんな危機的状況にも動じない男とかいうね…。

なんというか、意志のコントロールが生半可じゃない!

私の父も強い人でした。けれど、脳梗塞で左脳をやられた。

「お父さん、怖いの?」と聞いたら頷いて「うん。」と答えた。

ああ。これが意志のコントロールだったのか、とその時思いました。父はそれを失っていたのです。

 

 

それで、

この映画は、映画館で見なくてよかったです。音が緊迫感をあおってくるし、神経がもたない、というか、わたしは休み休み見ました。

 

もうもう、感動しました。久しぶりです!

 

夢に手を伸ばし続けた人たち、の物語です!

 

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 上手いんです、この監督!なんていうか、話の見せ方が上質というか、キッチュなところが無いというか…もうファンです、わたし。

 

この月到達は、危険な綱渡りのミッションでした。

たくさんの飛行士が犠牲になりました。ここまではよく知られていることです。

 

そのなかでアームストロングが何を感じ、進んでいったのかが、描かれた映画です。

スカッとした成功物語やヒーローエンタメを期待して見る映画じゃないです。

 

どんな困難があろうと、犠牲がどんだけあろうと、アームストロングは月に手を伸ばし続けます。

彼は、ある意味、夢を追う人たちの象徴として描かれています。

それと対比して、妻が犠牲者たちの象徴になっています。家族の不安、悲しみを描くことで犠牲の恐ろしさ、痛みがみじかな事として感じられるのです。

 

飛行士の夫を亡くした妻がずうううううと車のトランクの前に佇んでいます。

アームストロングの妻が声をかけると振り向いて普段通りの顔を見せるのです。鬼気迫るものがありまりました。子供も窓から覗いています。それがまた……。

 

数々のドラマや映画で、仕事にかまける夫たちへの妻たちの不満や寂しさを見せられてきましたが、この映画ではじめて、わたしは、置いていかれること、顧みられないこと、そうしたことの妻たちの喪失感に近いものを理解した気がしました。

 

 

冒頭にアームストロングのヘルメットに地球の青い地平線が映りこみます。

美しい!

そして、それは、月でもヘルメットの黒に景色が映るのですが、なんともいえない異質な空間を感じさせるんです。

 

月の景色が広がりますが、わたしが月へ行ったとしたら、きっと、こういう感覚を味わうんだなと思いました。

なんていうか体感する映像なんです。

 

アームストロングは娘の形見のブレスレットを手から滑らせました。

ブレスレットは真っ黒なクレーターに吸い込まれ、そして漆黒の影に消えていきました。

 

 

 

#

チャゼル監督は、TVドラマも手掛けるとか。

メッチャ楽しみです。

 

 

 

アナザー・ライフ

ケイティ・サッコフ主演。 

 Netflix2019年。

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 あらすじシーズン1 

 地球に降りた謎の宇宙船の起源や意図を探る恒星間飛行に出た宇宙飛行士たちを描く。彼らは多くの予想外の危機に見舞われるwiki

 

 

脚本がっ、くそ。

でも、最初、え、ぇ…え!と思ったサッコフがメッサ良いのです! 

 

 サッコフ。彼女は宇宙船の船長です。👇

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 ドラマの作り(画作り)は悪くない、むしろ面白いんだと思う。

 けど、サッコフ(一番年上)を除けば、他の飛行士たちが不良少年少女の集まりって感じなんだ。

 

 一応、未来のお話だけど、組織に規律がなーーーーーーい!

副長がサッコフにはタマがねぇ、とか言って、3、4人の不満分子を集めてクーデターを起こす。

あのさ、この宇宙船は人類の命運を握る重要な任務を帯びているんだよ。

ありえねーーーーー!

なんでも制服も廃止されたんだって。軍隊や警察組織から規律を取っ払って、個々人の自由裁量に任せたら、絶対、戦えない、守れないよね。

命令にあーだこうだ、自分はこう考える、とか始まるわけよ。

だから、たぶん、少年少女たちがバカなんじゃなくて、規律の問題だと思う。

 

 じつは、退屈なシークエンスは早送りで見ちゃったんだけど、サッコスが出ているシーンはしっかり見た。

彼女は、アクションが上手いの!動きにキレがあって、ホントにつおい!って感じる。素晴らしい!

後半になってくると、つくづく、この人の表情や動きが好きだぁ、って思う。

 力強くて危機管理能力の高い有能な指揮官をしっかり演じてます。

 

で、脚本の他にもう一つ、文句!

 

最初にサッコフを見たときにね、えーっ、サッコフ、80歳になったん?!と思ったわけよ。

39歳だった。

思うに、彼女には似合わない濃い眉毛にしてる。そして落ち窪んだ目に対して、ハイライト一つ入れてない。

 ヘアースタイルも似合ってない。ひっつめ髪の方が良いのではと思う。

んで、ライトがね、男性を撮るみたいな深い陰影が出る光の当て方をしている。

彼女の皺と窪んだギョロ目を際立たせている。

 

感じの良い皺の撮り方ってきっときっとあると思うの。

 

ここら辺が、とても不思議なドラマで、監督か製作責任者は男のように強い女を撮りたかったにしても外見も男と遜色なく撮ってみたかったのかぁ…?

 

 そそ、精巧なAIが、拗ねるんだよねぇ。あれはたまげました。

 

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サッコフ氏。