瑯琊榜/男の愛

 「わたしはあなたを選びます」

靖王にそう告げた時、彼は彼女を捨てていた。

 

(3600字)ネタバレ注意!

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 彼(梅長蘇)の愛情は全てが靖王のものだった。

 

 左から靖王、梅長蘇、彼女(王女)。

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主役の役者さん、フー・ゴーが、とても気品のある佇まいで演じきっているので、男同士の友情、愛情と日本語を使いたくなるが、このドラマはまごうことなき(オタク的)ボーイズラブだ。

思わず、「これを書いた人は、女性でしょぉ!こんなん女にしか受けないしょ!」と口走ったわたしは、調べました。(๑╹ω╹๑ )

やはり女性作家で、原作はWeb小説。彼女が脚本も担当していた。

そしてなななななんと、中国で大ヒット、中国版エミー賞にもたくさん輝いた!そうだ。

 

 ふむ…訳は分かる。

 

靖王と彼の愛には分厚く史劇が乗っかり、これを復讐劇だと見れば、オタク臭は消える。

この作品は、2015年中国製作、総監督はコン・シェンとリー・シュエ。そして原作脚本は、海宴(ハイ・イェン)さん。

脚本がめっちゃ上手い!監督が超プロフェッショナル!

小気味よく展開される短いシーンに情報がぎっしり!印象に残る画もいっぱいあった。

冒頭のシーンで、歴史ファンタジー だと納得させ、畳み掛けるように皇子たちの政権争いと、瑯琊閣と梅長蘇の密接な繋がり、作戦の一端が示される。

 

 瑯琊閣の公主と可愛い飛流👇

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序盤は、探偵ミステリー物のようで、謎含みである。

梅長蘇がみる悪夢。地獄絵さながらの戦場で、若い武将が父から「生きよ!」と言われて崖を真っ逆さまに落ちていくナイトメア。

そして彼は、余命2年であることが分かる。瑯琊榜(瑯琊閣が出す有名なランキング)の才人ランキングのNo. 1でもある。

その彼、梅長蘇が都に行くのだ。危険過ぎると瑯琊閣の公主に止められた彼は、「準備は整った」と言う。

 

ネットでのドラマの感想は、「最初のほう、わけわかんなくて」と言う人が多かった。

こういう「わかんない」という人は、ドラマの作り方を無意識に見ているんだなと思う。

始めてこういう作りのドラマに遭遇したなら、訳が分からなくて当然、訳が分からない作りなのだから。はっきり示されるのは、主人公の命が短い、ということだけだ。

 

時々、ここまで説明するか?!というドラマがある。視聴者のわかんなーい、という言葉をTV局はもっと精査して欲しいもんだ…と思う。

 

もとい、

とても心に残るシーン。

 

梅長蘇は、宮中の礼儀作法に精通というよりあまりにも馴染んでいるので、皇族だったのか、と思って見ていると、太皇太后たちから拝謁せよ、と命じられる。

ボケている太皇太后と彼女の娘や妃たち女ばかりが居並ぶ。彼女たちは噂の梅長蘇が見たかったのだ。

梅長蘇と、彼の弟子でもある貴族の若者二人がひざまずく。若者たちのおばあさま、つまり太皇太后に挨拶すると、なんと太皇太后は、梅長蘇を「小硃、小硃、」と12年前に死んだ者の名で嬉しそうに呼びかけるのである。周りはみんな、ばあちゃんはボケてるからと思っている。しかし俯き加減の梅長蘇の顔は、彼が小硃、つまり死んだはずの林硃であることを物語る。そして彼がそのおばあちゃんを愛していることも。

おばあちゃんは、彼に「これが好きでしょ」と言ってお菓子を渡した。

…彼は小さなお菓子を…手のひらで包み込む。その仕草がおばあちゃんの愛情を手の中にそっと留めようとするかのようでもあり、いつくしむようでもあり、ひとことで言えば、美しい…。

 

おばあちゃんは、王女も梅長蘇の横に並ばせて、二人の手を重ね「まだ、結婚していないの?」と言う。

その時、梅長蘇は王女の手をぎゅうと握りしめて離さない。

彼は、そういう手を離したくない女を…捨てたことになる。

劇中で、「選ぶ」という台詞のみならず、弟子に「わたしを捨てた」と言わせているので、作者の意図は、はっきり、(たとえそれが妄想であっても)わたしには伝わったよ。

 

そもそも、何故、梅長蘇が林硃だと誰も分からないのか、と言えば、12年前、戦場から脱出出来た彼は毒に侵されていたのだが、その解毒治療というのが、皮を剥いで骨を削るというもの。んぎゃあああ。なのだ。

かつて、国で一番強いと言われた武将の姿はなく、もう武術が使えない体だし、抗がん剤でも打ってる感じの病身。

少年のころ師事した儒学者が、勇敢な武将でありながら鋭敏な頭脳を持つ優れて理知的な若者、と評した。彼は、かつての外見を失ったが、己の知力で勝負に出たのだ。

 

12年前、策略によって、大虐殺が起こされた。

7万の大軍が皆殺しにされ、後継の優秀な皇太子とその家族、軍の総大将である林家とその一族、異議を申し立てた英才たちとその家族、が粛清された。

 

梅長蘇こと林硃は、林家の息子、靖王は皇太子の下の弟で、林硃と靖王はいつも一緒にいた友であった。

 

他所に出向いていた靖王は粛清の難を逃れるものの、帰ってきた彼は、皇帝(父親)に詰め寄った。皆が口をつぐむ粛清の嵐の中、詰問する靖王は真っ直ぐで向こう見ずな性格であった。

当然ながら、以降、彼は、皇帝から嫌われ、冷遇される。いつか殺されるだろうという塩梅。

 

靖王を救うことを選んだ梅長蘇は、だからこそ、復讐ではなく、魑魅魍魎が跋扈する政権を正す。彼はすでに江湖の大半を支配する武侠集団を作り上げていた。黒幕に刺客を送って復讐を果たすこともできた。

しかし、悪を詳らかにし、謀反の誹りを覆さなければ、靖王はいつ殺されてもおかしくなかった。

梅長蘇は、病気の治療にたぶん数年、武力に優れたスパイ組織の構築、作戦の下準備にたぶん5、6年?

そうして、残り2年の命をかけて、腐れ切った政権を正す、このドラマは、そこから始まるお話だ。

 

雪の中の靖王を呼び止める梅長蘇👇

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敵の術中にはまった靖王は、皇帝に直訴に行こうとする。もちろん、行けば殺されるだろう。

梅長蘇が「殿下、殿下、」と必死に説得するが聞く耳持たず。

 

…その時、梅長蘇が「蕭景琰!」と靖王を名前で呼ぶのである。

懐かしさがこみ上げる死んだ友、林硃の呼び声のようであり、靖王は立ち止まるのだった。

 

以降も、靖王は、梅長蘇のいろんな癖を目にするたび、懐かしさと苦しさに見舞われるのだ。

「自分は狂ってしまったのか」と思う靖王なのである。

ネットでは林硃だと気がつかない靖王は愚鈍とかバカと言っていたが、靖王は正しい。

だって、梅長蘇の正体に気がついたのは、女三人だけ。詰め寄られた梅長蘇が白状したからである。男で知っているのは将軍だけで、それは梅長蘇と文通(都の様子を知らせていた)していたから。

もちろん、彼を囲んでいる男たちは知っているが、彼らは皆、梅長蘇の部下である。

 

そして靖王は策謀家を死ぬほど嫌っている。彼の真っ直ぐな性格のせいもあるが何より兄も、友の林硃も策謀によって殺されたからである。

梅長蘇に惹かれながら、信用していない靖王は、そのせいで彼を酷い目に合わせたりする。

ここら辺も、女には、切ない快感に心震わせるポイントであって、そうした快楽や可愛いさポイントがいっぱい散りばめられている。

知っている話しだなぁ、と思う箇所も多く、作者は、こうした面白い展開、快感ポイントといった昔からのステレオタイプを数多くコーディネートして物語を作っている。

 

わたしは梅長蘇と瑯琊閣の公主、梅長蘇と護衛の飛流のやり取りがツボだった。めっさ可愛い!

靖王や将軍といった武将達に梅長蘇が説明というか説得しているシーンがある。

梅長蘇に何か言われるたびに、彼らは代わりばんこに、「チュダ」って言う。「わかった」って意味らしいが、これもツボだった。

 

そうだ、忘れられないシーンがある。

梅長蘇は病で、意識が朦朧としている。

覗き込んだ靖王(景琰)に、うわごとで、

「景琰、怖くない」と言うのだ。

どんな意味もあてはまりそうな悲しい言葉である。

その前のうわごとで「父上…」と言っていたので、また、皆殺しの戦場にいるのかもしれない。その時、19歳だった彼は自分が死ぬと思った時、「景琰、怖くない」と言ったのかもしれないし、景琰、つまり靖王を残して自分が逝くことを心配して「景琰、大丈夫だよ」という意味だったのかもしれない。

 

物語は進み、ラスト、本当に孤独そうな靖王の顔が写って、お話は終わった。

 

 

 

このドラマの中で、「昔の楽譜を発見した」と音楽愛好家が話すシーンがある。

彼らは、漢字が並ぶ楽譜を見て、ふんふんとかやっている。確かに漢字には音の意味があると聞いたことがある。

けれど、それはとても複雑な音の意味だとも聞いた。

であるならば、合理的な音符の感覚ではなく、漢字の楽譜は解析してようやっと音が掴めるって感じなのでは、とか不思議に思った。

 

 

梨泰院クラス/パク・ソジュン

 わたしはこの人の演技がとても好き。👇

 

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 パク・ソジュンさん。☝️(「キム秘書は一体なぜ」から)。

 

そしてとても綺麗な顔をしてる。

 

 がっ、その彼が、とんでもないヘアースタイルで出演しているドラマを見た。👇

 

「梨泰院クラス」

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この写真はまだ普通に写ってるけど、実際ドラマでみると、、もうもうあり得ないから!

でも、このドラマ、めっちゃ、面白かったよ!

 そいで、

ななななんと、パクソジュンは、 本宮ひろ志の漫画、「男1匹ガキ大将」「俺の空」なんかの主人公を表現してたよ!

本宮ひろ志漫画の 実写映画なぞも借りて見たけど、そらもうね、無理なんだなぁ、あの主人公を表現するのは…とか思ってた。

 

とととところが、時が経ち、韓ドラで、本宮ひろ志の描く、そして私が抱いたイメージではあるが、それをソジュンが体現してみせるとは!ちょっと、興奮したよ。

 

この「 梨泰院クラス」というドラマは、Web漫画が原作でサクセスストーリー。

一話目が「重くて苦手ぇ」と思った人(わたし)でも、それ以降はほどよいテンポと軽やかさもまとってるので、だいじょうぶ。

 

ソジュンの友人のV(BTSメンバー)が楽曲を提供してる。


【和訳】V(BTS)「Sweet Night」[梨泰院クラスOST(ITAEWON CLASS OST Part.12)]【歌詞/日本語字幕】


[MV] V (BTS) - Sweet Night [이태원 클라쓰 OST Part.12 (ITAEWON CLASS OST Part.12)]

 

 また、このドラマのお話しは、特に目新しくもなく…でも、そこは韓ドラのエンタメ性が炸裂して飽きない作りになってるよ。

個人的な感想を言えば、やっぱ、ソジュンの存在が大きいんだと思う。

この人って、共演者たちを輝かせるんだよねぇ。

 

👇の「花郎」ってドラマもそうなんだけど、ソジュンがドラマに厚みをもたらしていると思うの。 

 この「花郎」ってドラマは、まぁ、青春劇。

花郎ファラン

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👇の「 成均館スキャンダル」ってコメディドラマは、学園青春ものの名作だと思うんだけど、つまり、まず、脚本が若々しくて、権力批判や社会批判が…こう…爽やかな風みたいなんだ。その脚本を、ほんとに、21、2歳の若い役者たちが、瑞々しく表現した。もう、無敵しょ?!

 

でもって、わたしは、せいこちゃんのブログを読み耽り、こうして、ヤバイヤバイと思いながら、中国ドラマ、流れて韓ドラにドップンして、そそ、せいこちゃんおすすめの「花郎」を見て、ソジュンに落ちたのよねぇ。

 

ん、話を戻すと、「花郎」を見て、同じ青春モノの「成均館スキャンダル」より、脚本が緻密というか、上質だわ、などと感じていて、しかし時間が経つにつれ、この感じはやっぱ、ソジュンの存在が大きい、とわたしは結論したよ。 

 

成均館スキャンダル

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ん…そらまぁ、わたしの印象によるタワゴトですけどね、

ソジュンって、器用な役者さんなんです、コメディもできる。多少の作為があるので、天性のコメディアンじゃないけど、可笑しい。

例えば「彼女はきれいだった」で、ソジュンがiPadに熱中して、硝子戸にバンってぶつかる。185cmの長身がパタンと折れて崩れ落ちる。おぉ!って感じで可笑しい。

でも彼の演技って、どっか飄々としている。

たぶん、いえね、わたしのタワゴトですよ、彼は、全体を見ている人だなぁ、と思うのよ。

役者として表現力がどうのこうのより、流れを読んでいる視線の広さが、彼の醍醐味かなぁ。

 

 まあね…ソジュン、大好きよ。

 

 

#

そそ、「成均館スキャンダル」、わたしは、ゲッタゲタわらいました。

女の子が男に化けて入学するんだけど、主人公が、その女の子に恋をするのね。

で、彼は、俺は女が好きだったはずなのに、男を好きになった…!と、煩悶するわけ。

その様子が、可笑しい!

 

 

 

母と格闘した日々

 わたしは絶対にやってはいけない事をやった。

 

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 もう、昔の事だ。

 

わたしの母はとても優しい人だ。どこか脆さもあるが、強い人だと思う。

父が亡くなってから母は一人で暮らしていた。

わたしは仕事が忙しかった。

きっかけは叔母のひとこと。

「knoriちゃん、お母さん、変だね」

母の妙に強迫的な言動にわたしは気がついていた。けれどわたしは自分のことにかまけていた。

叔母に注意され、目が開いた。わたしは意を決して、母の家に行き、母と話した。

母は完全に狂っていた。

 

わたしと母は、毎日顔を合わせていた。出勤前の慌ただしいなか、母の家の前で車を止めると母が見送りに出てくる。

「今日は早く帰ってくるから、買い物に連れて行こうか?」せわしなくそんな会話をしていた。

 

ともかく、その日、意を決したわたしは母の家に久しぶりに入った。びっくりした。家の中がおかしい…。

母はわたしの質問に「薬を間違えて、2倍飲んでしまった」というようなこと言った。

薬を調べたわたしは、仰天した。母は向精神薬も服用していた。

母の薬の服用は数年前の睡眠薬からだ。「よく眠れないと言ったら、病院で睡眠薬を出してくれたのよ」と言っていた。かかりつけの個人病院。

みんな風邪を引くとその病院に行った。わたしはその医院で出される睡眠薬を時々のんでいるだけだと思い込んでいた。

 

よく考えると、最近、母は、耳がおかしいと言って、耳鼻科で検査してもらっていた。たぶん、それは幻聴だったのではないかと思った。

 

…そしてわたしは、絶対にしてはいけないことに着手したのだ。

 

わたしは、母の異常な言動は、薬のせいだと確信した。母には一つも異常なところはないはずだと思ったのだ。

しかし、精神科で母の異常は薬のせいだというわたしの主張が通るはずがないと思った。

ましてや専門家を相手に素人が口出しすることは絶対にできないとも思った。

だって、目の前の母は完璧、異常だったのだから。

 

その当時は、言動がおかしくて手に負えない老人たちが病院や介護施設にぎゅうぎゅうに詰め込まれていた。

 

わたしは、母を入院させれば、母は治らない、と思ったのだ。

 

だから、わたしが母の薬を抜こうと思った。

しかし、ネットで調べると、一年くらいかけて薬を抜いていくことさえ、素人がやるのは危険だと書かれていた。

それをわたしは、2ヶ月でやろうと思った。早急な離脱は、絶対、厳重な医師の管理のもと行わなければならない、と書かれている。

一人で、独断でやった。

急いだ理由は書かない。

 

仕事を辞め、母をわたしの家に連れてきた。

5、6種類の薬のうち、害になっていると思った薬を少しづつ、止めていった。

時々、どうしようもなくなって、戻したりもした。

わたしの家にはR(夫)と彼女(猫)がいた。しかし、わたしはその当時、二人がどうしていたのか、全く記憶にない。彼と彼女の世話をどうしていたのか、覚えていない。まるで、二人がいなかったような感じなんだ。

頭の中ではその2ヶ月間は母とわたしだけだった。地獄のような日々だった。

母を羽交い締めにするように抱きしめながら、「大丈夫、何もいない」と言いながら、泣けてくるんだ。母が大掃除のつもりで荒らしたんだろう部屋を片付けながら、やっぱり泣けてくる。真夜中だというのに、外に出ると言って聞かないので、マイナス十五度の中、二人で歩いた。帰りは母を抱きかかえて引きずりながら戻った。わたしは母と格闘技をしていた。

そうして、2ヶ月が過ぎる頃、母は治った。元の母に戻った。

 

その当時のわたしがどんな有様だったのか、Rは何も言わなかったし、彼女(猫)は、もちろん何も言わない。