籠の中の乙女

 ヨルゴス・ランティモス監督。2009年ギリシャ映画。原題は「犬歯」。

 

f:id:knori:20181027160749j:plain

 

 悪夢のような映画…。権威的なオヤジが息子に刃物で切りつけられて、その夜に見た悪夢つうような風情…。もっともこの映画のような権威的な男はたとえ子供から反逆されてもこのような夢は見ないだろうけど。

 

結構な年齢の男子(長男)と姉妹の3人が一歩も家の敷地内から出ることなく、一切の情報も遮断された状態で教育されている。子供ら(マジ、いい大人)は、犬歯が生え変わったら、外に出ていいことになっている…。(生え変わらないわ!)

 

久々に、同一化も共感もなく、かなり冷静に見た映画。(なにによって阻まれたのかわからない)。カメラワークはかなり好きで、誰かを思い出すような(といっても、ついこの間まで、監督を意識してこなかったので、絶対誰なのかを思い出すことはない)。

 

この映画は、なんらかのルールや権力行使を疑え、己の権力を省みろ、というような明確なメッセージがある。もっと言えば、「わたしが世界であるならば、わたしは世界を越境できない」的な、ペシミスティックな考えも漂う。

しかし、映画を見ること=同一化される限りにおいては、どんなちっぽけな映画であっても、広がりがある。100人見れば、100通りの広がりがある。

この映画は感情移入を阻むので、底が浅い、くなってしまうだろうとわたしは思う。たぶん、観客のわたしも映画の作り手なのだ。

 

おまけに、過剰だ、どうだ!こんくらいやっても目が開かないかい?みたいな過剰さ。観客をバカにしてんのかと思ったけど、ロッキー、ジョーズフラッシュダンスというハリウッドに対するラヴコールが出てきたので、過剰さは監督の野望だったのかしらん、とおもう。この過剰さって不快だった、すっごく。

 

が、時間が経つと、映像の美しさ(一部除く)だけが残ったんだけど。

 

「聖なる鹿殺し」みるかどうか迷ってたけど、追い詰めらる話しがすごく苦手だし、やっぱ見ない。