マイケル・ムーア監督。2015年作。 ドキュメンタリー映画。
間違えて見ちゃったのだ!(くぅ…)
「華氏119」って言ったらパッと出てきたから、「お、あるんだ」って信じちまうよねっ!で、最後になって(ホントに最後になって)気がついた…。
この映画は、マイケルムーアが世界各国の福祉政策がどうなっているのか、調べて回るつうもので、イタリア、フランス、ドイツ、スロベニア、ポーランド、チュニジア、フィンランド、ノルウェー、そして最後はアイスランド。
それで、構成にすごく味がある!
マイケルさんは、負け続きで反省した各軍のトップから、各国へ派兵されるんだ。良きものを侵略して奪ってくると息巻いてる。そいであちこち行って「ほへー、すっごい良い事ですね」とか言ってるんだけど、だんだんみんなに言われるんだ、「アメリカから学んだんですよ」とか「アメリカのアイディアですよ」と。
そして、彼は言うわけ、「アメリカは福祉の先進国だったんだ。仲間同士、助け合おう!アメリカはそれができる国なんだ!」ま、大意はこんな感じ。で、オズの魔法使いのジュディ・ガーランドが出てきて、赤い靴をカツカツと鳴らして大円団を迎える。
一番最初に行ったイタリアがもう可笑しくて…ベタベタしているカップルばっか撮って、「やあ、イタリア人て皆んなセックスしたばかりって顔してるなあ」ってのうのうとして言うんだけど、確かにイタリアって愛で全ては回るみたいなイメージがあるわけで、ここら辺はすごくユーモラス。
面白かったのが、刑務所の話。
ノルウェーは、教育刑みたいな制度で、死刑はなくて最高でも22年だったかな?で、これもアメリカに習ったと。アメリカの憲法に「重い罰を与えない」という文言があるそうだ。
ずっと面白く見ていられるのだけど、何かアイスランドは雰囲気が違う。そのせいか分からないけどこの辺りでとても疲れが出てくる。
あと、やっぱり、ドイツの児童教育でジェノサイドについて教えられる子供の顔は胸がつまった。
ムーアは、要するに、懐かしの「大きな国家」保護主義政策だった頃のアメリカを懐かしんでいる。
しかし、今は、世界中が「小さな国家」でやっていくしかなく、つまり、保護主義的政策が成り立たなくなっている、という本を昔、読んだ。
ムーアは軍事費を削れ、刑務所の莫大な費用を抑えろ、ノルウェーというお手本があるじゃないか、そう言っていると思う。
けれど、彼が紹介したヨーロッパの各国は、経済が立ち行かなくなっていたり、移民問題で揺れていたり、実は大きな困難を抱えてもいるが、ムーアはそこら辺は華麗にスルーする。
頻繁に他国の人々から拾い上げていた「困っている人がいたら助けるのが当たり前」と言う言葉は、彼が、もっともアメリカに思い出してもらいたいことの一つなんだろうし、最後の華やかな希望あふれる終わりの底流に郷愁が漂う。