「ピクニック」それはにがい涙

ジャン・ルノワール監督、脚本。1936年。モーパッサン原作。

amazonリマスター版40分

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ルノワール監督のお父さんはあの画家のルノワールです。

監督は、トリュフォーゴダールといったヌーヴェルヴァーグの旗手たちに尊敬されていた人です。だから、一体、どういう映画なのか、見てみたいと思っていて、amazonにコレが出ていたので、たった3、40分のこともあり見て見ました!

 

この作品は小品ながら運命に翻弄されたというか、ただ、プロデューサーがこの映画に執着していたおかげで日の目を見た作品です。

未完だったのですが、ルノワール監督は「これでもいける」とばかりに、ササっと編集を済ませて、戦争が始まったので、アメリカに行きました。

一度は失われたフィルム(ナチスのせいで)なのですが、もう一つ隠し持っていた人がいて、プロデューサーが、物語を説明する字幕を2か所入れ、音楽をつけて、アメリカにいるルノワールの了承を得て公開されたものです。

 

率直な感想なのですが、2か所の字幕はいらなくね?と思いましたよ。

現代人のわたしは、映画言語に、つまり映画的記号に慣れてしまっているというか、字幕必要ないよなあ、と思ったです。

それと、オープニングの音楽、ちょっと嫌だなあ、というのも少し思った…。

 

えっと、この作品には、監督自身が出演してます。レストランのオヤジ役で(思い出すと笑ってしまう)、ちょっこと出てます❣️

 

そそ、ルノワール 監督の周りには助監督の仕事でとか、後々、超がつくほどの有名人がゴロゴロいました!ビスコンティロッセリーニ、ジャック・ベケット、写真家のブレッソンなどなど)。器がでっかい人だったのかもしれないですよね?

 

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 で、

この作品は、家族でピクニックに出かけた(婚約者も一緒)若い女性が、煌めく自然の中で、生命の自由を感じ、初めて恋をする。しかし、自分はそれを選ばないことがわかっている、そんな短い人生の一コマを写し取ったものです。

 

初夏でしょうか。田舎の木々や草や川面は日差しにあふれています。

日差し、つまり光の美しさが大して美しいわけでもない凡庸な景色を煌めかせています。

ブランコに乗る若い女性は、屈託なく輝き、若い神父が思わず足を止めててしまうのが笑えます。

 

空が曇ってきました。雨になるかもしれません。彼女は母親に言います。

「黄金色の毛虫がいるわ、きっと美しい蝶になるわね。ねえ、お母さんもこんな気持ちになったことがある?とても、悲しいわ。」

結婚を控え、自然の中で開放的になった彼女は少しばかり、自分の事を考えたようです。

 

ボートが滑るように川面をゆきます。

彼女がときめいた見知らぬ彼はキスをしてきて、

彼女の目からは涙が流れていました。

 

 

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 深く余韻が残る作品ですが、現代の女性が主人公に心を動かされはしないでしょう、と思います。

 

この映画が切り取った断片は自然の中で開放的になった女性が初めてときめいた男性とキスをした。その後、偶然、彼と出会った。

それだけなんです。しかし、見終わってしばらくして、人生の苦さだなあ、などと思う場合、それは、この作品が持ってしまった力にやられたということです。

ほら、優れた作品は作品固有の力を持つ、ってやつです。と、思います。❤️