スティーヴン・ ソダーバーグ監督。タレル・アルビン・マクレイニー脚本(「ムーンライト」の原案者)。iPhone7による撮影。
Netflix2019年(90分)
大好きなNBAのスポ根モノだと思って視聴。
ちゃったわぁ。
NBAのロックアウト(オーナー側と選手会側の労使交渉が決裂。オーナー側は選手たちをすべての施設、場所から締め出すもの。1998年のが有名。2011年にも行われた。はず。)
こうしたNBAのロックアウト現場が舞台。新人選手のエリックが代理人のレイにお金のことで泣きつく。
レイはロックアウトを打ち破るある仕掛けを実行するが、それがつまびらかになるのは後半。
ソダーバーグ監督は淡々と登場人物を画に収めていくので、割と軽いノリでサクサクと見られる。レイ役のホランドも切れ者のビジネスマンを柔らかな雰囲気で演じているので、殊更な緊迫感やスリルといったものはない。
単にビジネスものとして十分に楽しめる映画。
良い映画だと思う。
けれど、この映画は、とても啓蒙的な側面を持っている。
新人選手エリック役のメルヴィン・グレッグ(後ろの男性)
レイは新人選手のエリックに封筒を渡す。
「まだ見てはいけない。ことが終わってから見ろ」という。
最後の最後に封筒の中身が明らかになるが、それは『Revolt of Black Athlete』(黒人アスリートの反乱)というタイトルの本だ。
著者のハリー・エドワーズ博士は、(ネットをちょっことあたった感じでは)、黒人アスリートが経営に参加することを奨励していた人らしい。
黒人に誇りを持たせたかったのではないかと思う。
バスケの老コーチがイベントでこう挨拶する。
「俺たちは自分たちが得意なもの(バスケのこと)を白人に売っちまったんだ。
白人は、ゲームをカネまみれのゲームで支配している」
強気なオーナーたちの代表役、カイル・マクラクラン
レイの上司は、彼に「お前はバスケを愛しすぎている」と言っていた。
けれど、レイは、バスケではなく選手たちを愛していた、彼らをきちんと啓蒙してやろうという野心を持っていた。
レイの仕事の能力も見誤っていた上司の末路は推して知るべしなのだし、最後、商談相手がいる(らしい)部屋のドアをレイは颯爽と開けはなつ。
ソダーバーグ監督は、レイや助手の女性(黒人)の行動に黒人っぽい鬱屈や暗さを撮らない。つまり彼らは白人化された黒人のように見える。
こうした、(言葉は悪いが)、白人化する黒人の姿をエドワーズ博士は望んだのだろうか?けれど、わたしの偏見に過ぎないけど、長い間、黒人はこうした白人化を拒んできた印象がある。
スカッとさせてあざやかに終わる映画だったけれど、実のところ、波乱含みではないかと思った。