虐殺器官

原作は伊藤計劃村瀬修功監督、脚本。2017年。

 ネタバレ注意

f:id:knori:20140730164702j:plain

 

虐殺器官』は、34歳で病死された伊藤計劃氏の処女作、SF小説です。

未読なんですが、ブログを見て、『アデン・アラビア』の一節を思い出したりしていました。

 

ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。(ポール・ニザン

 

なんとなく、SFではあるけど、私小説的な(というのも変かな?)心情が綴られていて、若い怒り、悲しみ、アナーキーな感性を持つ瑞々しい小説なのではないかなあ、と思っていました。(読め!ってね。)

 

それがアニメになりました!

 

あらすじ

世界の紛争地帯を飛び回るアメリカ軍特殊部隊のクラヴィス・シェパード大尉に、ジョン・ポールという謎のアメリカ人を追跡せよとのミッションが課せられる。世界各所で起こる紛争や虐殺の影には、優秀な言語学者だったというジョンの影がちらついていたが、いつも忽然と姿を消してしまうという。ジョンがチェコに潜伏しているという情報を得たクラヴィスは、追跡を開始するが……。com

 

 

原作未読のわたしの感想は、です。

軍事作戦シーンや海中の作戦シーンとかの画がとても良かったです。

(ネットの感想を見てみると、原作をとても愛して製作されたようで、変更箇所は数カ所だったそうです。 )

 

 

ラヴィス大尉はジョンを捕まえるために、ジョンの恋人のルツィアに近づきます。

ラヴィスは、どういうわけかルツィアを愛するようになります…。

わたしは、これはジョンに「虐殺文法」で洗脳されたからなんだろうな、とずっと思っていました。(違うらしい)。

 

そして最後、サイコな野郎に代わって、クラヴィスがサイコになってしまう理由も理解不能です。

心情的な物語が欠落しています。

 

つまり、クラヴィスの内面は一切描かれません。彼は、軍事的に脳の調整がされた無感動、無痛、な兵士、最初から最後までそういう印象です。

 

ラヴィス大尉。

f:id:knori:20190316213411j:plain


 

印象としては、上の写真のような、口だけ動く顔を見せられながら、延々と長台詞といったシーンが多々あります。

抽象的な声だけが乱舞している感じです。

 

映像は声に比べると、とても明確なメッセージを持ちます。

声、言葉は、曖昧な意味の広がりを持ちます。

 

だから、表情を持つ顔を見せられる実写映画なら、詩情のある物語になるかもしれません。

予算が無かったのか、原作に遠慮して、大胆な変更を伴った脚本にできなかったのか、でしょうか…?

 

世界の至る所にある、貧困、テロに対処するときの倫理的問題等、面白いテーマを持ったアニメでした。