フアン・アントニオ・バヨナ監督。パトリック・ネス原作・脚本。2016年。
出演フェリシティ・ジョーンズ、シガニー・ウィーバー、ルイス・マクドゥーガル、リーアム・ニーソン。
「行かないで…」少年は瀕死の母親に抱きついて言った。
慈悲深いリーアムニーソンの声があなたに語りかける。「こうして、やっと少年は母親を手放したんだ」
むかーし見た映画の少年が心に残っている。
彼は、病気で死にゆく母親に大変怒っていて、母親が手を伸ばして「お前が私を愛しているって知ってるわ」と抱きしめようとするのだが、彼は怒りを母に向けたまま、手を振り払う。
長いこと、わたしは彼は一体立ち直れたんだろうか、と密かに危惧していたんだ。(アホだってね。)
つまり、少年(12歳くらいの頃の?)、子供にとって親の死は受け入れられない事で、乗り越えるのはたいへんだってことなんだ。
ネスという人がこの題材について児童書を書いて、カーネギー賞を受賞した。それを映像センスがめっちゃイイ監督が、スゲー、キャストを揃えて映画化した。
この物語の構成はあまりに見事で唸るしかない。
映画の冒頭、怒りと鬱屈を抱えた少年が映る。
彼は、イチイの木の怪物から3つのお話をされるのだ。
そのお話は、まだ、子供には早すぎるような内容で、悪は一概に悪でないし、善も一概に善ではない、2つ目の牧師の話は、オトナななはずのわたしにも難しい話だった…。
実際の現実と交差しながら、怪物とのやりとりがなされ、少年の心をハダカにしてゆく。
ラスト、彼が罪悪感を吐き出せたのも、怪物のお話のおかげ。
少年が困難を乗り越える話でもあり、母の溢れる思いの話でもある。
ラスト、少年を抱きしめた母が怪物を見遣る眼差しは印象に残る。
また会えたわね、と言っているようでもあり、ありがとう、と言っているようでもあった…。
少年が鉛筆で四角を描く。絵を描く。その接写が心地よい。
絵を描いている時の感覚、紙の上に現れる線に感じる心地良さ、それがわたしによみがえってくる。