ブリザード凍える秘密、普通にこだわる悲劇

 グレッグ・アラキ監督、脚本。2014年。

 シェイリーン・ウッドリーネタバレあり

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彼女は するりと服を脱いだ。 

重そうな乳房があらわになるが、彼女の長い髪が蒸せ返るような若々しい肉体を瞬く間に隠した。

 

 

あらすじ

1988年のある日、17歳の女子高生キャットは父ブロックから母イブがいなくなったことを知らされる。カウンセリングを受けることになるが、その内、キャットは母の不思議な夢を見るようになる…。wiki

 

彼女の裸体のイメージがしばらく抜けなかった!もうこの映画はおっぱい!とか思ったが、しばらく経って、落ち着いた…。w

 

この映画は、一風変わったミステリー。スリルや緊迫感はないが、どこかしら、薄気味悪さがある作風なんだ。

 

母親が失踪したというのに、娘はツラーっとしている。ほぼ、娘の視点から事のあらましが語られていくが、彼女はなんというか、面の皮が厚い、というか、母親との関係も少し尋常ではない。

そ。そして、この17歳の少女はメークをしてセクシーなドレスを着て刑事を誘惑するのだが、とてもとても綺麗!

 

 

ネタバレあり。

少女の母親、少し狂っている。

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彼女は友人に言う「父は表面を引っ掻いてもその下に表面があるような人」だと。

この言葉が、ラストの結末へと結実していく。

つまり、世間体や体裁ばかりを取り繕っていることへの、監督の痛烈な批判なのだが、その結末の描き方は、わたしにとってかなり後味の悪い、イヤァなものであった。

 

「笑うな!」と言う夫と高らかに笑う妻。

夫は、自分を恥じて隠しているのだ。だから、笑うな、と叫ぶのだし、妻は、自分の苦悩の理由がわかって、むしろ自分を、その苦悩を、笑っていた。

だからここの齟齬は恐ろしい。

 

妻はたぶん、夫に長い間、触れられていない。浮気もしていない。浮気をしていたならば、彼女は、肉体が花開いてきた娘に嫉妬することもなかったし、娘のボーイフレンドの前に、恥ずかしい短いスカートをはいて現れることもなかったはずだ。

 

この父と娘は、決して妻に、母に、「どうして欲しい?」「何を悩んでいるの?」と聞かなかった。

父は、自分の欲望とその羞恥心に埋もれ、娘は、思春期で自分のことで精一杯だったにしても、自分の心をけっして覗き込まなかった…。

 

なんという悲劇だろう…。

とても悲しい。