デイミアン・チャゼル監督、 ジョシュ・シンガー脚本、2018年。
ニール・アームストロングの伝記 『ファーストマン、ニールアームストロングの人生』を原作とした伝記映画。
むかし、宇宙飛行士の、その後、とかの本を2冊くらい読んだ。
だから、アームストロングがどういう人だったとかのイメージはあったんだ。
どんな危機的状況にも動じない男とかいうね…。
なんというか、意志のコントロールが生半可じゃない!
私の父も強い人でした。けれど、脳梗塞で左脳をやられた。
「お父さん、怖いの?」と聞いたら頷いて「うん。」と答えた。
ああ。これが意志のコントロールだったのか、とその時思いました。父はそれを失っていたのです。
それで、
この映画は、映画館で見なくてよかったです。音が緊迫感をあおってくるし、神経がもたない、というか、わたしは休み休み見ました。
もうもう、感動しました。久しぶりです!
夢に手を伸ばし続けた人たち、の物語です!
上手いんです、この監督!なんていうか、話の見せ方が上質というか、キッチュなところが無いというか…もうファンです、わたし。
この月到達は、危険な綱渡りのミッションでした。
たくさんの飛行士が犠牲になりました。ここまではよく知られていることです。
そのなかでアームストロングが何を感じ、進んでいったのかが、描かれた映画です。
スカッとした成功物語やヒーローエンタメを期待して見る映画じゃないです。
どんな困難があろうと、犠牲がどんだけあろうと、アームストロングは月に手を伸ばし続けます。
彼は、ある意味、夢を追う人たちの象徴として描かれています。
それと対比して、妻が犠牲者たちの象徴になっています。家族の不安、悲しみを描くことで犠牲の恐ろしさ、痛みがみじかな事として感じられるのです。
飛行士の夫を亡くした妻がずうううううと車のトランクの前に佇んでいます。
アームストロングの妻が声をかけると振り向いて普段通りの顔を見せるのです。鬼気迫るものがありまりました。子供も窓から覗いています。それがまた……。
数々のドラマや映画で、仕事にかまける夫たちへの妻たちの不満や寂しさを見せられてきましたが、この映画ではじめて、わたしは、置いていかれること、顧みられないこと、そうしたことの妻たちの喪失感に近いものを理解した気がしました。
冒頭にアームストロングのヘルメットに地球の青い地平線が映りこみます。
美しい!
そして、それは、月でもヘルメットの黒に景色が映るのですが、なんともいえない異質な空間を感じさせるんです。
月の景色が広がりますが、わたしが月へ行ったとしたら、きっと、こういう感覚を味わうんだなと思いました。
なんていうか体感する映像なんです。
アームストロングは娘の形見のブレスレットを手から滑らせました。
ブレスレットは真っ黒なクレーターに吸い込まれ、そして漆黒の影に消えていきました。
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チャゼル監督は、TVドラマも手掛けるとか。
メッチャ楽しみです。