スターシップ9/彼の選択

 青年は一人ぼっちの少女のために危険を冒すのです。SFだと思ったこの映画は、愛の物語でした。 

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 アテム・クライチェ監督、脚本。2016年。スペイン。

クララ・ラゴ、アレックス・ゴンザレス

 

 地球は汚染によって住めなくなりつつあった。エレナは、移住先を探す宇宙船に住んでいる。故障した宇宙船を直すためにエンジニアの青年アレックスが乗り込んでくる。

 

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少女は、どうしたって両親と話したかった。

丘を埋め尽くして並び立つ家々、そこから谷底に広がる夜の街を見下ろしている青年。

 二人は各々が自分の葛藤を解決するための行動に出ます。エモーショナルな愛の絡みではなく、それぞれが犠牲を払って己の問題と向き合います。

 

夜景を見下ろす青年はどうやら、競技場のグラウンドを見ているようです。競技をしている人たちは豆粒ほどにしか見えません。最後に分かるのですが、この映像は青年の選択の哀しい犠牲を象徴していました。

 が、しかし、青年がその代償を払う価値がある可憐で美しい少女でありました。

 

若い肉体は、どんな光を当ててもどんな切り取り方をしても美しい。

世阿弥は、最後の芸術として老いに残る一輪の花を見ました。映画は一輪の花の幽玄な美を捉えますが、それを嘲笑うような老いの醜さも写出してしまいます。つくづく映画は青春の芸術だなと思います。