諸葛亮は死んでしまった。子供の頃、暗澹たる気持ちになった。吉川英治だったか横光のだったか、覚えていない。わたしは司馬懿が憎らしかった。
このドラマは、その司馬懿を主役にしている。
司馬懿☝️2017年制作。
そもそもが、吉川英治も横光も、たぶん「三国志演義」の2次創作だった。
「三国志演義」は、「三国志」の二次創作で、茶屋(中国の茶屋って時代劇ドラマで見ると大きなカフェみたいなんだ)で庶民が楽しんでいた講談などをもネタにした小説、らしい。
というわけで、「コイツさえいなければ、諸葛亮は統一を成し遂げられたんだ」と思い込んでいるわたしは、司馬懿の人物像をどのように膨らませてくるのか、大いに楽しみだった。
司馬懿は、魏をぶっ壊す下地を作ってその2年後に死ぬ、史実的には。
このドラマでの彼は、徳川家康の忍耐と合理性において曹操に似ていると思った。
ラスト数話で、彼は本来の姿を見せ始める。
「俺は自分のために刀を振り下ろしたいんだ」と司馬懿は言うのである。今までずっと、主君のために刀を抜いてきた、もう嫌だ、と。
息子の司馬昭は、躊躇いなく自分のために刀を使い、何晏を使って曹爽を暴走させる。父を仕向けたのだ、曹爽一族の粛清に。
忠義を捨て去ったら、君主タイプである司馬懿ってこうでしょ?とドラマは問いかけてくる。冷酷な策略家である息子の司馬昭と父は重なっていくのである。
父とそっくりに司馬昭は振り返る。狼顧の相同士である父と子が見つめ合った…。
ところで、司馬昭に利用された 、
何晏という男は、日本で言うところのかぶき者という感じだ。
当時のドラッグをきこしめし、遊び歩いている。三国志の戦乱では、中国の人口の半分?くらいが死んだんじゃない?まあ、そういう動乱の世の中で、秩序や常識を嘲笑い、自由だ!と叫んでいるような若者だった。
自由ってやつは、いつの時代でも人を魅了するんだなぁ、と思う。もしかしたら、きちんと、老子とかの思想の流れはあるのかもしれない。…どうだろう?
あと、女性の話。
甄夫人☝️
司馬懿は出世すると、3、4人の側室を抱えた。その頃には、正室の張春華とは疎遠になっていたらしい。
病気の彼を見舞いに来た張春華に「今更、のこのこ老婆が何しにきた」みたいなことを言ったらぢい。頭にきた彼女は、息子たちを巻き込んで断食をやった。
驚いた司馬懿は奥さんに謝ったわけ。ところが、「俺は息子たちが可哀想だから謝ったんだ」とのたまった、という。
わたしはこの逸話の意味がずっとわからなくて、子供みたいな負け惜しみ言ってるし…。当時の風潮(貴族階級)の「女はいくらでも替えがきく」みたいな感覚とは、なんか違うなぁ、って。
果たしてこのドラマでは!?\( ˆoˆ )/
にゃんと、司馬懿は恐妻家で、愛妻家でした…!おーっ!
(張春華は若い頃、夫の秘密を守るために女中を殺す事も辞さない人だった。)
写真の女性は、 曹叡の母親、甄夫人。めっさ、綺麗な女優さんだった。特に、髪の質感や色合いは、光を吸い込んだように艶々として、彼女の肌に映える。とても美しい。
曹丕は、この甄夫人(人妻)を夫である敵の将軍から奪って、正室にした!
そいで…曹丕は16年後、甄夫人を殺してしまう!
彼女の髪を乱して口に糠を詰めて棺に入れず、埋葬したんだと。
曹丕がそこまで彼女を憎んだ理由はわかっていない。
一説には、寵愛する郭妃を皇后にしたかったからとか、曹植との仲を疑ったからとか…。
このドラマでは、2回も殺そうとしている。1回目なんぞは、曹丕、切りつけてっから。まだ子供だった曹叡は必死で父の刀を掴んだ。ヒェェェ。
彼女は「もし生まれ変わることがあったら、絶対にあなたと会いたくありません」って振り向いて曹丕に言った。その顔がなかなか忘れられない。
三国志の中の男たちは、政治的システムである礼節を守り忠義に縛られ、乱世の世を生き抜く。
そして、女たちは、女だけの世界観の中で結構、果敢に生きていた、ように思える、ドラマを見ていると。夫を許せないとなると、無言の行を続けたり、死も覚悟したり…なんて言うか、男を審判している、そんな感じがある。 その世界観は、男たちを縛っていた儒教的秩序(男尊女卑)から意外と自由だったのではないか、と感じた。ドラマでは、ね。