knoriはゴリゴリと働いていた。
彼女はアルバイトの青年を指導することになった。
あれこれと青年に命令を出し、knoriは威張っていた。
「だって威張んなくちゃね!」とは、knoriの弁である。
ある日、青年が笑いながら言った。
「knoriさん、アラレちゃん、読んでるでしょ。」
仰天し、口を大きく開け過ぎたせいでハズレかけたアゴを手で戻したknoriは「ななななななんで、わかるの??」と聞いた。
「だって、knoriさん、オヨヨって言うもの。」
「うっわぁ」とknoriは思った。コイツ、なんて眩しい笑顔を向けてくるんだ。
knoriの頭の中はがらんどうだ。隙間風が吹きぬけるように、人生は過ぎていったが、伽藍堂の片隅には、埃をかぶった青年の眩しい笑顔が今も鎮座ましましていた。