若い人は美しいものだ。老人はと言えば、皮膚の輝きは失せ、筋肉が弛んで容貌も変化する。 このTVドラマには、名優の名をほしいままにするそんな老人達がぞろぞろ出演している。
老姉妹とメアリー☝️
BBCドラマ、2007年、サイモン・カーティス監督。
エリザベス・ガスケル原作。
ジュディ・デンチ他、名優多数。
けれど、ジュディ・デンチ扮する老姉妹のもとには、まだ充分に美しいメアリーが滞在している。クランフォード村で織りなされる日々の出来事には、美少女も青年も極貧の少年も登場する。美しいものが見たい!という欲求は叶うドラマだった。
そしてなんと、デンチには、美があった。
ビィクトリア朝末期?産業革命が進行していた時代、技術による産業形態の変化は、人々の暮らし、階級システムや習慣にも否応なく変化をもたらしていた。
厳格に秩序を守る老姉妹の姉が亡くなった後、妹のデンチは、姉の厳格さを少しずつ緩めてしまう。オレンジの食べ方だったり、女中の恋愛を許したり、姉が厳しく禁じていたものだった。
姉の保守性には、慈善、思いやりがあった。古い秩序は崩れ、社会が変容していくことに対する哀愁をデンチは感じさせる。
デンチは、いつも姉の影にいるような善良な老婦人だった。
彼女は昔の恋人と出会い、彼の農場に招待された。ふと、壁にかかった、若き日の彼のポートレートを彼女は見つめる。ポートレートにデンチの目が写る。その眼差しには引力があった。ビックリした。
このショットをモノにする老婆って、すごくない!英国のカメラって気を衒わない、というか、ただ撮るんよ。それがなぜか、凝ったショットを撮ったんだねぇ。
それと、デンチがメアリに自分の過去を話す結構長いシーン。
淡々と彼女は話す、淡々と。なんていうか、彼女には迫力があるというか凄みがあるというか、怖さすらあって、気がついたら、悲しみで胸がぎゅうと締め付けられていた。
こうした力が「美」なんだろう、そう思った。