東京女子図鑑とインクルーシブ

「そうかぁ。彼は足長おじさんかぁ。」

 経験の少ない若い女性にとってみれば、不倫相手は大なり小なり「足長おじさん」になり得るんだと、感心しながらドラマを見ていた。

f:id:knori:20210701045853j:plain

 2016年、タナダユキ監督、黒沢久子脚本

水川あさみ主演

 

水川あさみは要所要所で、どすの利いた声や凄みのある顔を見せる。

リアリティのある魅力なんだ。

水川あさみを見ながらドラマを楽しんでいた…ら、ラストで考え込んでしまった。

 

最近、わたしは、中国、韓国の現代ドラマをチョロチョロ見ている。若者が元気だ。

比して、日本ドラマの若者はとても大人しい印象。

例えば、中国ドラマでは、平凡な若者が起業する。彼の空は、見通しの良い青空なんだ。

そして日本は、既得権益の隙間をついて起業するにしても、重く雲が垂れ込めている。

そこに登場する若者は「何をしても何も変わらない」と思っているのかもしれない。案外、鋭い?

資本主義社会の成熟は、既得権益の壁を厚くし、それが経済、国を衰退させると言われる。

その成立要因のひとつである閉鎖性や、もたらされる組織の硬直化は、若者の気力を奪っていく。

 

「東京女子図鑑」で主人公が、港区の男性を紹介される。

彼は、既得権益層の一員である。

庶民である主人公とは結婚出来ないんだ、と彼は言った。

「文化圏の違いは、大きな負担を生む」

彼の説明は、納得しやすい。誰だって適応障害にはなりたくない。 

 

くだんの主人公は、あっさり引き下がった。

この主人公は、最近の日本ドラマにしては珍しく活力がある設定だ。彼女は、資本主義社会におけるインセンティブを持っていた。

ここで、「文化圏の違い、面白いね」と言ったらどうだろう?

摩擦が起きてこそ、風穴があき、新しいものが生まれるってもんじゃないかい?

 

主人公の同僚たちの様に、保守的じゃなきゃやっていけなくなった若者が、率先して現状維持に甘んじている。

 

閉鎖性や硬直性は、上位1%だか2%の権力を守り、利益を集中させる。だんだん機会の平等を損なう様になる。

 「機会の平等」はものすごく大事だ。倫理的な意義より、活性化の為に「機会の平等」は担保されなければいけないと思う。

 

つまり、閉塞感の一番の対抗馬は、活発に関わっていく多様性なんだ、と、わたしは思ったのだ。

 垂れ込める曇天を動かしていくのは、みんな違うから面白い、という関わろうとする多様性なんだと思ったの。

 …まぁ、確かフランスがだいぶ前にインクルーシブを取り入れて失敗したんだよね?

倫理的で受動的な多様性は限界がある。

うーん。疲れた。