太子妃狂想曲

「男は男らしく、女は女らしく」という当局のお達しは、嘘かホントか分からないけど、中国映像業界の規制強化は悲しい。

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2015年、ルー・ハオジジ監督

6年前、規制が始まる前の「太子妃狂想曲」は、低予算ながら、ぶっ飛んでいて、めったんこ愉快!

 

ある日のこと。女性を踏みつけにしてきた浮気男は、古代の太子妃の体にタイムスリップする。つまし、身体は太子妃、意識は現代青年なのだ!

 

男に迫られる太子妃の、中身は男…。👇

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彼、、太子妃を取り巻く状況は、太子とその愛人、愛人は太子の兄嫁、そして、太子妃を慕う太子の弟、つう四角関係であったぁ。

ほぼほぼ、宮廷劇だし、女もいっぱい出てくるし、画的には男女のカップルたちである。

しかし、、内実は、BL的なコメディ。よく考えついたなぁ、と舌を巻く物語なんだ。

太子の部屋は赤く、シーツはヌタヌタした黒色。ベッドシーンでは、女体ではなく男の筋肉をカメラが追う。

パンクっぽくて、ゲイのパロディに見える太子の衣装や美術は、低予算の画面にケレン味のあるアートっぽさを与えている。

 

大きな意味で、性差を笑い飛ばしており、豪快なんだ。

 

ところが後半にきて、男と女のつまり、太子と太子妃の恋愛をグダグダやり出して、あれれ、と思っていると、ラストのラストに現代に戻る。

そして、2人のオッサン(太子と、外見が戻った太子妃)のアップで終わった。

 

出来の良いドラマだったので、意味に広がりがあった。

なのに、ラストはダサイというか、蛇足というか、意味を狭めてしまうよなぁ、と思う。

 

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ホントにさ、、中国の文芸って底知れないものがあって、これからが楽しみだなぁ、と思ってた。

長い年月をかけて、当局の規制をくぐり抜けてきた時代劇ネタは、ホント面白い。

「全ては政治的である」ってどこで見たんだか思い出せないけど、直感的になるほどって思う。物語の背景描写や文脈は、政治的批判に繋がりやすい。

中国の恋愛現代劇は、それらを丁寧に避けているものが多く、信じられないくらい単純な物語に終始する。