ものすごく雰囲気のある刑事ドラマだったよ。
シェトランド島の風景と音楽、そしてペレス警視。彼の存在は、何か美的なインスピレーションを、風景に与えていた。
シェトランド島の風景は、ファンタジーで馴染み深いスコットランドに似ている。
思うに、この風景は、わたしの感覚を異化するんだと思う。
わたしにとっての異化は、物語化の始まりだ。出来事は、物語ることでしか、理解できない。たとえ、それがある一面に過ぎなくても。
オープニングがかかった時、わたしは、このドラマの物語世界に包まれていたよ。
特に、「大鴉の啼く冬」は好きだなぁ。
この物語には、老人が登場する。
文芸作品などで「聖なるもの、大いなる者、白痴、異端者」などと呼ばれる存在だ。その存在によって、世間や人の醜さを照らし出す、という手法だ。
目新しくは、ない。
でも、ずぅっと余韻が残った。
短いシーンだけど、警察に連行されることを悟った老人は、服を着替える。きちんとした服に着替えた。
あれほど、彼に対して残酷な世間に、敬意を払ったんだと思う。
このシーンを思い出すだけで、わたしは悲しくってしょうがない。