静夜思/相柳の最期
「ベッドの前に、霜と見まちがう様な白月光が差し込んでいる。」

「頭を上げて山にかかる月を眺める。
うつむいて、あなたを思った。」
なぁんてことではなく、相柳の最期を見届けたわたしは、可哀想で可哀想で、
TVの前で、ぐちゃぐちゃになってハラハラと泣いていた。
すると、Rがやって来て、わたしの顔を覗き込む。
「今日は、ご飯、いりません。出掛けるからね。」と言った。
わたしは、うんうん、と頷いた。
また、涙が落ちた。
この「ご飯、いらない」という、これは、わたしの密かな、長い苦労のすえの成果だ。
Rは、いま、パブロフの犬になっている。
むかし、友人にこぼした事があった、「彼は家事を一切しない」と。
友人は「それはknoriが悪い。教育しなきゃ。」と言ったんだ。
彼は、優しそうな外見とは裏腹に、絶対、自分の考えを曲げない人なんだ。
そこで、思いついたのが、条件付け、なのよ。
例えば、わたしは熱を出して寝込んでいる。
「コンビニ弁当、買ってこようか?」
と、彼は、嬉しい事を言う。
ところが、
買って来てくれたのは良いけど、ゴホゴホ、、テーブルの上の侘しさを見て不機嫌になる彼を横目に、しょうがないので、何か、一品、作る。そして、ゴホゴホ、後片付けもわたしがする事になる。
いっそのこと、彼ひとりで、外で食べてもらった方が良いのよ!
と言うわけで、
「今日は、ご飯、いりません」とRが言うたびに、わたしは、嬉しそうな顔をした。
また、ある日は、
ドラマを見ながら、泣いていたわたしを、彼は笑いながら、外食に誘う。
ノンノン、間違ってるでしょ。
つう具合に、紆余曲折を経て、わたしに不都合が起きている、ばあい、彼は、条件反射的に、「ご飯、外で食べてきます」と言う様になったのだ。
えへん。
ああ。。そそ。こんなバカ話しをしてる場合じゃ内。
相柳、相柳の話よ。
わたしは、この「長相思」を楽しんだけど、唯一、解せなかったのは、「蠱毒、情蠱」なんてガジェットをわざわざ持ち出しているところ。
当たりをつけて調べてみると、
李白は、
『客遠方より来たる」という鴛鴦で有名な詩の二次創作をしている。
相思相愛から逆転の『擬從遠方來詩」という詩だ。
「長相思」の作者は、この二つを使って、相柳というキャラを作ったんだなぁ、と思う。
前者には、綿々と続く「断ち切れない思い(糸)」と「結不解」をかけた言葉遊びがある。
これを表現する為の情蠱だったんだと思う。
後者は、、ま、ね、、翻訳に次ぐ翻訳で、おまけに我流の超意訳ってことで、間違っているだろうけど、書いとくよ。
「……月に寄り添い、琴の音が揺らした松風に、永く心を寄せる。
月と風に捧げるこの盃(思い)ほど、誠実なものはない。
(仙人の自分と比べると)人の世は儚いなぁ。」*1
劇中で、相柳は従兄に「彼女は手の届かない存在だ」と言っていて、「天上の月」と言ってた様な気もする。
相柳は、そう心を決めるしか無かったんだろうなぁ。
それでも、彼は、戦場に一粒の涙を持って行った。
彼女の涙だ。
倒れた相柳の目にその涙が落ちた。
消えゆく意識の中で、彼は、彼女の残した心に触れた。
「もう、お前を守ってやれない。
幸せになれよ。」
相柳の最期の言葉だ。