「前にもあった」と、思う。
Rはなんで「今夜は、夕飯いらないよ」の一言を、言い忘れるのか?
わたしは、ひとりで食べる羽目になったアサリをフォークで掻き出しながら考えた。
きっと、明日になれば、「言いました」「聞いてません」の言い争いになる。
でもむかしは、、と、口一杯に含んだ甘いワインをごくんと飲み込んで、思い出す。
若かった頃は、「いったい、この落とし前をどうつけてくれる!」くらい威勢よく言い合っていたなぁ。
「言ったよ!」「聞いてない!」
互いに揺るがぬ自信があった。
でも、でも、最近、年をとって、わたしは記憶に自信がないのよ。。
「聞いてません。。」
謙虚である。
心なしか、ワインの色に哀愁を感じるわたしだった。
そういえば、Rも最近は、「言いました。。」って、慎ましやかな口調よねぇ。
アサリのワイン蒸しは、意外に、甘いワインに合って、美味しかった。