目の前を、Rは行ったり来たりしていた。
わたしの視線に気がついたのか、彼と目があった。
わたしは、彼を見つめたまま、目を逸らさなかった。
すると、
「どうして、僕を見詰めているの?」と、Rは目を輝かせているではないか。。
わたしは多分ぼんやりしていたのだと思う。仕方がないので、ある意味本当で、ある意味嘘を言った。
「他に見るものがなかったから。」
「犬じゃないんだから」と彼は破顔した後、目を輝かせたわたしを見て、困惑している。
これまで散々、わたしをおちょくったり嘲ったりしてきたRは、突如、犬畜生になった。
わたしは、心から、密かに笑った。
春が来たよ。
☝️林檎の花、芽吹き始めた木々。
この林檎の花は、すずなりになって咲くんだ。
明け方の光の中で桃色の花が揺れている。
優しい風に心を撫でられる。