黄色いビートルに乗って

 「寒いね。」

 「マイナス20度まで下がったらしいよ。」

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冬の色は寂しい。

茶色と白のグラデーションしかない。落葉した木々の茶色と雪の白だ。

子供の頃、雪に覆われたカラマツ林で大きな黄色い月を見た。

心を打たれる美しさだった。

 

若い時は「どこにだって行こう」と思っていた。望んだ場所に住めると思っていた。

愉快なことに、人生は甘くなかった。

 

わたしは、相変わらず寂しい色の雪道を車で走っていた。

 遠くの方から黄色いビートルがやってきた。

 

 その時、色が完璧に調和した。

 

 

 

三国志 軍師同盟

 諸葛亮は死んでしまった。子供の頃、暗澹たる気持ちになった。吉川英治だったか横光のだったか、覚えていない。わたしは司馬懿が憎らしかった。

 このドラマは、その司馬懿を主役にしている。

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 司馬懿☝️2017年制作。

 

 そもそもが、吉川英治も横光も、たぶん「三国志演義」の2次創作だった。

三国志演義」は、「三国志」の二次創作で、茶屋(中国の茶屋って時代劇ドラマで見ると大きなカフェみたいなんだ)で庶民が楽しんでいた講談などをもネタにした小説、らしい。

 

 というわけで、「コイツさえいなければ、諸葛亮は統一を成し遂げられたんだ」と思い込んでいるわたしは、司馬懿の人物像をどのように膨らませてくるのか、大いに楽しみだった。

 

 司馬懿は、魏をぶっ壊す下地を作ってその2年後に死ぬ、史実的には。

このドラマでの彼は、徳川家康の忍耐と合理性において曹操に似ていると思った。

ラスト数話で、彼は本来の姿を見せ始める。

「俺は自分のために刀を振り下ろしたいんだ」と司馬懿は言うのである。今までずっと、主君のために刀を抜いてきた、もう嫌だ、と。

 

息子の司馬昭は、躊躇いなく自分のために刀を使い、何晏を使って曹爽を暴走させる。父を仕向けたのだ、曹爽一族の粛清に。

忠義を捨て去ったら、君主タイプである司馬懿ってこうでしょ?とドラマは問いかけてくる。冷酷な策略家である息子の司馬昭と父は重なっていくのである。

 

父とそっくりに司馬昭は振り返る。狼顧の相同士である父と子が見つめ合った…。

 

 

ところで、司馬昭に利用された 、

何晏という男は、日本で言うところのかぶき者という感じだ。

当時のドラッグをきこしめし、遊び歩いている。三国志の戦乱では、中国の人口の半分?くらいが死んだんじゃない?まあ、そういう動乱の世の中で、秩序や常識を嘲笑い、自由だ!と叫んでいるような若者だった。

自由ってやつは、いつの時代でも人を魅了するんだなぁ、と思う。もしかしたら、きちんと、老子とかの思想の流れはあるのかもしれない。…どうだろう?

 

あと、女性の話。

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甄夫人☝️

 司馬懿は出世すると、3、4人の側室を抱えた。その頃には、正室張春華とは疎遠になっていたらしい。

病気の彼を見舞いに来た張春華に「今更、のこのこ老婆が何しにきた」みたいなことを言ったらぢい。頭にきた彼女は、息子たちを巻き込んで断食をやった。

驚いた司馬懿は奥さんに謝ったわけ。ところが、「俺は息子たちが可哀想だから謝ったんだ」とのたまった、という。

わたしはこの逸話の意味がずっとわからなくて、子供みたいな負け惜しみ言ってるし…。当時の風潮(貴族階級)の「女はいくらでも替えがきく」みたいな感覚とは、なんか違うなぁ、って。

 

 果たしてこのドラマでは!?\( ˆoˆ )/

にゃんと、司馬懿は恐妻家で、愛妻家でした…!おーっ!

(張春華は若い頃、夫の秘密を守るために女中を殺す事も辞さない人だった。)

 

写真の女性は、 曹叡の母親、甄夫人。めっさ、綺麗な女優さんだった。特に、髪の質感や色合いは、光を吸い込んだように艶々として、彼女の肌に映える。とても美しい。

 

曹丕は、この甄夫人(人妻)を夫である敵の将軍から奪って、正室にした!

そいで…曹丕は16年後、甄夫人を殺してしまう!

彼女の髪を乱して口に糠を詰めて棺に入れず、埋葬したんだと。

 

曹丕がそこまで彼女を憎んだ理由はわかっていない。

一説には、寵愛する郭妃を皇后にしたかったからとか、曹植との仲を疑ったからとか…。

 

このドラマでは、2回も殺そうとしている。1回目なんぞは、曹丕、切りつけてっから。まだ子供だった曹叡は必死で父の刀を掴んだ。ヒェェェ。

 

彼女は「もし生まれ変わることがあったら、絶対にあなたと会いたくありません」って振り向いて曹丕に言った。その顔がなかなか忘れられない。

 

 三国志の中の男たちは、政治的システムである礼節を守り忠義に縛られ、乱世の世を生き抜く。

そして、女たちは、女だけの世界観の中で結構、果敢に生きていた、ように思える、ドラマを見ていると。夫を許せないとなると、無言の行を続けたり、死も覚悟したり…なんて言うか、男を審判している、そんな感じがある。 その世界観は、男たちを縛っていた儒教的秩序(男尊女卑)から意外と自由だったのではないか、と感じた。ドラマでは、ね。

 

 

バスタイム

お風呂でも本が読める、と私は思う。

これは、読書を諦めたくはないが、諦めてお風呂に入らなければいけない、という最高のジレンマに対するわたしのエキスキューズだ。 

 

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濡れた手でページをめくり、本がふやけてくるが、お湯はピンク色だし、フルーツの香りが漂っている。

わたしはお風呂が好きだ。

 

……お風呂に入るのは好きだ。

 

タツで丸くなっているわたしは「今日はお風呂に入らない」と呟く。

「そんな日もあるよね」と隣のRが言う。

 

彼は分かっていない。わたしはお風呂には入りたいのだ。

わたしはお風呂に入った後、裸のまま、すぐにお風呂掃除をする。

脱衣所も掃除する。Rが飛び散らかした汚れは、わたしの入浴後は綺麗さっぱりピカピカになる。

 

 だから今日みたいに疲れ切っている深夜には、お風呂に入りたくない。つまり風呂掃除をしたくないのだ。

 

「明日、掃除すればいいよ。」

 

彼は分かっていない。

わたしは入浴後は掃除をしてしまわないと気が済まない。

入浴すれば、どんなに疲れていてもやらざるを得ない。 

 

 

風呂掃除を逃れるために、わたしは入浴できない。

 

どうよ?もっすごく理屈が通ってるでしょ?

 

私はみかんを剥いた。