遠い昔、中国の小さな村。上元節の提灯が揺れている。
旅立つ少年に、母は「天官賜福(≒神のご加護を)」と言った。
「怖いものはないよ」母に向けた少年の笑顔は屈託がない。
中国の上元節、中元節、下元節は、道教の神を祀るお祭りだ。
上元節は神の祝福、中元節は罪の赦し、下元節は厄を祓う。
道教では、天界、人間界、鬼界があるとされる。中国ファンタジー、武侠ものの舞台、世界観として馴染み深い。
天界には天官たちがいる。天官とは、つまり神さまのことだ。
功徳を積んだ人間は、天界に飛昇(召喚され)、人々から信仰される神さまになる。
鬼界にいる鬼たちは、死んでも死にきれない人間たちだ。
このアニメは、ひとりの神さまと、彼を信じる鬼の物語。
ネタバレ注意⚠️
一期目、スゲー楽しんだ。
最近、2期目が始まって、5話しかアップされてないのに見てしまった。
我慢できなくて、ネットで原作あらすじを探しちまったよ。
うーん、面白い、深い。。
主人公の神さまは、生まれも育ちも良く、天賦の才を持ち、若くして、天界に飛昇した。
お祭りのとき、神さまは、城壁から落ちた貧民の子供を救った。
「生きる意味がわからない」という子供に、神さまは「じゃあ、わたしのために生きなさい」と言ったんだ。
時々差し挟まれる、ボロを纏った子供の映像、、彼はいつも廟に向かって嬉しそうに駆けていく。
屈託のない若さに輝く、心優しき神さまは、その後、辛酸をなめる。神さまは、貧民の子供のどうしようもない絶望感を理解した。そうして800年間、下界を放浪しながら、庶民の辛苦を見つめることになる。
もうひとりの主人公は、神さまに助けられた子供である。
物語は、800年後の現在から始まる。その中で、少しずつ、彼らの過去が明かされていく。
前に、道教の自由思想って、キツイなぁ、と思ったけど、この物語を見て、道教が庶民のための宗教である、ということをわたしは忘れていたんだなぁ、と思う。
儒教は、権力者のための宗教だし、仏教者は悟りを得たがる。
道教は「何でもいいから生きろ!」と言うんだなぁ。
原作者は、墨香銅臭さん。
「陳情令」にしろ「天官賜福」にしろ、主人公は掟や常識に縛られず、困難な自由を生きる。これに呼応するキーワードは「信」なんだなぁ。
ウェインは、ランジャンの手を振り払って崖から落ちていく。ウェインは、この時、何も信じていない。
そして「天官賜福」では、ひとりの子供が命がけで神さまを信じ愛するんだわぁ。
800年後、子供は美丈夫な鬼になっていて、スパダリっすよ。
…うっぁぁぁ。