「あたしのこと覚えてる?」爽やかな笑顔でp子は玄関先に立っていた。
「覚えてるよ、p子でしょ?よくここが分かったね?」
彼女は中学の同級生で、確か、三年生の時に引っ越したはずだ、と思っていると、矢継ぎ早に喋り出したので、「まぁ、お茶でもどう?」とうながしたんだけど、彼女は、すぐに帰るんだと言う。
それから十数分間、彼女は話し続けた。「あぁ、わたしは、この人が苦手だった」と、思い出す。なんでなのか分からない。
彼女の夫が遠くの方で、手を振った。
メールのアドレスでも聞こうか、でも、頻繁に連絡がきそうで嫌だな、とか、思案しているうちに、彼女は、「じゃあ、元気でね」と言った。
多分、これが最後かもしれないな、と思ったので、
「幸せに、過ごしていたのかい?」とわたしは聞いた。
彼女は思いを巡らすように目を伏せ、そして、「うん。そだね。」と爽やかな笑顔を見せた。
彼女を見送った後、踵を返して、玄関に向かい、よろけて塀に手をついた。
わたしは、この10分間で、彼女の人生のあらましを知ったことに気がついた。