ブライアン・パーシヴァル監督。マークース・ズーサック原作。 2013年アメリカ公開。
題名に魅かれて見ました。わたしは一時期、本が友達というような悲しい時期がありまして、そういう女の子の話かと思ったんですね。(インフルの治りかけで、ツタヤへ行けてまへん)。
全然違いました。
一言で言えば、「童話絵本を映画にした」ような映画です。
第二次大戦が始まる直前から戦争末期までの、ドイツの少女の物語です。彼女は、田舎町の貧しい夫婦の里子になります。全ては幼い女の子の目線で語られていくので、戦争の胸をえぐるような悲劇や重さといったものからは免れています。
主人公の少女リーゼルと親友のルディ少年
そもそも、この映画の出自はしっちゃかめっちゃか、というか、原作はオーストラリアの作家(児童文学で賞をもらっている)、 マークース・ズーサックで、アメリカでヒットした『本泥棒』です。舞台はドイツで、『アンネの日記』のようにユダヤ人を匿う話が重要な骨子となっているらしい。(未読)。
それをアメリカが映画化。舞台はドイツの小さな町。監督はイギリス人。役者はドイツ、英国、カナダといった感じ。言葉も、少しドイツ語と英語でした。(意味わからん。何故、混ぜたん?)
で、このブライアン・パーシヴァル監督というのは、あの「ダウントン・アビー」のシーズン1、2、3を監督した人です。
彼は、何というか、自国の文化、歴史をキチンと踏まえた上の職業監督という感じで、 わたしはこうゆう人好きです。
で彼は、この難しい条件の映画をどう撮ったのかというと、(もう書いちゃったけど)、一片の絵本物語のように見せたんですねえ。
何というか、この映画は枠を、フレームを、えっと、額縁を、えっと、つまり、映像のフレームを意識させるんですよ。美しい挿絵のようなんです。
おまけにこの映画は(原作がそうなっているらしい)、死神のナレーションが入ります。その死神の声が、安心感を与えるというか、さあ、これからお話が始まるというようなワクワク感をもたらすし、絵本のページを開くようなんです。
曇り空の雪原を走る列車や車のシーンは、わたしには見慣れた景色なんですが、あまりにもミニマムにフレームの中に納まっていて美しく、心に残ります。
少女が暮らすドイツの田舎町の一角が、季節の変わり目を表したり、時間の経過を示すために映し出されますが、おウチの灯り、雪が降る様子、可愛らしくすっきりとフレームに納まっています。可愛いの。
少女も少年もすごく可愛らしいです。そして養父母役は、ジェフリー・ラッシュとエミリー・ワトソンで固めています。
この養父母はユダヤ人の青年を匿うことになります。
その青年と少女の交流がこの映画の骨子になります。彼は少女に教えます。
言葉は物を照らし形を与える、というような意味のことを。
(現実にはヒトラーに対し言葉で抵抗した人が処刑されたりもしたはず。)
それで、彼女は青年が瀕死の病気になった時に、本を盗んできて彼に読むんです。
それがこの映画の題名というわけです。
シェークスピアの国の監督ですから、言葉の豊穣という思いもかぶさっているかもしれません。
語弊があるかもしれませんが、わたしにとっては、見終わった後に残るのは、言葉の豊穣さに対する敬意だったかもしれません。