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この映像の何に惹かれたのか、わたしは言うことが出来ない。
珍しい事にわたしはこの映画に感情移入できなかった。美しい映像をただ最後まで飽きずに眺めた。
光司(三浦春馬)は公園で乳母車を押す女(井川遥)を見かけた。
彼は思わず彼女の写真を撮った。何枚も。
遠景の女と望遠レンズで女を取る光司。このシーンにはなにか湿り気があって、面白そうな話になりそうだ、と思ったが、彼女の夫(高橋洋)は乱暴に割り込んでくるし、富永(榮倉奈々)は、あっけらかんと、「公園の女性はあなたの亡くなったお母さんにそっくりよ」と言うのである。
光司の部屋には、ポスター大の母親の写真、彼の手には母の愛機(キャメラ)。彼の理想の女は母親なんだろうが、役者さんを見ていると、もう答えは分かっているという感じがするし、富永の光司姉弟に対するお節介は必要なのか…?
…なんというか、わたしは監督の白昼夢を覗き込んでいるような、そんな気がして見ていたので、血の繋がっていない姉(小西真奈美、頭の形がよいのでロングヘアーが綺麗。)と光司のキスシーンは、居心地が悪いったらない。
…光司がもっとぼやああああとした男の子なら分かるんだけどねえ。
あ、光司がマスターの独白を聞くシーン!光司が斜め横から写り込み、その冷たい目の光がひじょうに美しい!マスターの泥臭さを浄化してたよ!
他の人たちがメリルの演技を褒めるときも共通していて、みんな興奮してる。
昔、わたしはバラエティ番組で見たんだけど、若いアイドルタレント(少女)が映画に出る事になったと。それで共演の中堅どころの中年の女優さんも来ていて、さわりを二人で演技することになったわけ。
お笑いタレント達がいっぱいいてみんな騒がしい中、その中年の女優が、パッと涙を流し、少女に話しかける。
スタジオ中が息をのんで静まり返ってね。終わったら、みんな中年女優に物凄く感激していた。
わたしはそのことを思い出すわけで、つまり、メリルのそばで見ている人ってのは、あのスタジオのお笑いタレントとおんなじく、思いもかけず、ど感動させられる。けれど、メリルの生々しさというのはキャメラに写らない…。
それってどういう事なんだろう?