シーズン3の11話目、キム・マナーズ監督、ジャレッド・パダレッキ、ジェンセン、アクレス。2008年。45分。
Hulu ネタバレ注意
サム☝️
サムの視線や表情をカメラが丹念に追っていく。
最後、安モーテルのドアを閉めようとするサムが乱れたベッドを見る。
彼はとても複雑な表情を一瞬、見せる。
言葉ではなく、サムの表情と動きで彼の心理状態を見せていくドラマ。
サム(弟)とディーンの兄弟は、事件のあるところに出向き、怪物退治をしている。
兄弟は他にも沢山いる怪物ハンターたちとは違う。彼らは選ばれたヒーローだ。
宿命的な責務を背負わされている。
通常、ディーンは、脳天気でガサツな乱暴者のマッチョ。彼のユーモラスな動作は安心感とちょっとした休息をもたらす。
ご飯を食べるディーン。(ごめんね、あなたの良さに気がつくのに10シーズンもかかって。)
この11話では、ディーンが何回も何回もコロコロ死ぬ。
彼が死ぬたび、時間がリセットされて、火曜日の朝に戻る!
二人で歯を磨いている時のサムの顔が究極に困っており、ディーンは底抜けにバカっぽい。こうした二人の対比がしばらく繰り返され、そして、
ある日、時間が進み出すのだ。
つまり、兄は戻らない。
車にボガンと轢き殺されたディーン。
半年後のサム。
台詞はほとんどなかったと思う。彼の顔と行動をカメラが追う。
痛いほどの孤独と絶望がひしひしと伝わってくる。
サムは兄と違い、頭の出来が良く、ストイック。
モーテルを出るときには、ベッドメイクがなされ、歯磨きチューブは綺麗に使われており、兄が愛したインパラの中は完璧に整理されている。
サムの復讐と執念はついにトリックスターを捕まえることに成功する。
そして、ラストシーン。
半年前の水曜日が、兄がいる水曜日が始まる。
だらしがないベッド、ぐんにゃり曲がった歯磨きチューブ。
「今行くよー!」と答えたサムは、部屋を振り返った。
その一瞬見せる虚無感、喪失感はこのドラマにいきなり深みを与える。
ユーモラスなドラマで終わるはずだったものが深い陰影を持ったのだ。
半年の執念を燃やした捜索、その結果のバーンアウトよりも、
わたしは、恋人との暮らし、仕事上のパートナーとの関係、リズムを合わせ、譲り合い、共にあること、そうしたことへの笑顔の挨拶と、孤独な自由への惜別を感じたのだった。
※
このドラマはシーズン5くらいまで見て、その各シーズンを通して浮かび上がってくる叙事詩的なものを味わうべきです。
主役の二人はまだ若くて、二人のエネルギーがドラマに満ちています。
10シーズン以降のディーンはすごくいいです。
サムは、覇気が失われているし、ちょっとチックが出ていて、まだ、苦しんでいるのかもしれません。