ジャッジ 裁かれる判事

デヴィッド・ドブキン監督、原案。 スーザン・ダウニー製作。2014年。

出演ロバート・ダウニー・jrロバート・デュヴァルヴィンセント・ドノフリオヴェラ・ファーミガ

 

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 久し振りに顔を合わせた息子と毒親

 

 

法廷サスペンスの形を借りた、父と息子の確執と癒しの映画でした。

イイ映画だなあ、とは思いましたが、なんというかおとなしいんですね…。

wikiによると、評論家たちは、役者たちの演技は褒めているものの、作品は凡庸だ、と言っているとか。)

 

 

 あらすじ

 金で動く辣腕(らつわん)弁護士として知られるハンク・パーマー(ロバート・ダウニー・Jr)は、絶縁状態の父ジョセフ(ロバート・デュヴァル)が殺人事件の容疑者として逮捕されたことを知る。判事として42年間も法廷で正義を貫き、世間からの信頼も厚い父が殺人を犯すはずがないと弁護を引き受けるハンクだったが、調査が進むにつれて疑わしい証拠が次々に浮上し……。Yahoo!

 

 

この映画は、コメディ畑と思われる、ドブキン監督の原案で、自身の体験が元になっているそうです。

監督の視線は、息子役のダウニーの視線と重なります。目立ちはしませんけど、ダウニーがヘタするとストーリーテラーの役目です。

 

この映画のおとなしさ、の要因の一つではないかしら、と思います。

あと、アップショットも少なかったような気がするなあ。この対決のシーンはアップだろ、と思っても、横顔だったり、でも、役者たちが上手いので、私は、もちろん泣くわけでしたけど。

 

だから、本来重い話ですけど、淡々と見ることができます。

おまけに、お兄ちゃんと末っ子のやり取りがユーモラスで楽しいです!ドノフリオって、コメディも出来るんだ!ってびっくりしました。

 

役者たちがみんなすごくイイです!

 

 

 高校生の時の元カノ。彼は高校卒業以来、中年になるまで故郷に戻らなかった。

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 このシーンのダウニーがセクシーだった…!(アリーmy loveの時、彼に惚れたのよねえ)

 

 

それで、毒親の話です。

 ダウニーは数十年、実家に帰っていませんでした。当然、孫娘も一度も会わせていないわけです。徹底してます。

 

彼は母親の葬式に出るため、単身、故郷に戻りました。一体、どんな父親なのかと思うでしょ?

いや、びっくりです。

父親は(亡くなった妻に聞いていたのか)、ダウニーの家庭が上手くいっていないことを知っていて、なんと、息子に離婚問題で、毒舌を吐きました…。

ここら辺の描写も、監督はさっさと済ませてしまいたいのか、そんなことはわかりゃしませんけど、タタタタターとしか、、通り過ぎるように写します。

一切のエモが発生しないように撮っている感じです。

まあ、せっかくの団欒の場でも、この父親は暴れるんですけど…。まあ…。ね。

 

ダウニーは末っ子にホームビデオを見せられました。そこには幼い3兄弟が映っていて、楽しそうな父親とダウニーの姿が。

 

 父親と激しく口論した後、ダウニーの斜め後ろからのバストショットにフラッシュバッグが重なります。

それは、幼い頃、父親と釣りを楽しむ二人。

 

ダウニーに何故こうなった、という疑問がわいた瞬間なのかもしれません。彼は、何かを振り払うように頭を上げました。

 

実は、ダウニーは父親の暴言や冷たさに負けていなかったらしいことがわかります。

父親に平気で毒舌で切り返していたようです。元カノによると。(誰に対しもそうだったらしいが)。

 

毒親に対して「それは間違っている。あんたは最低野郎だ」ときちんと言っていたのだと想像します。

これは、精神衛生上、すごくイイんじゃないでしょうか?

 

もっとも、根本的には、ダウニーは深く父親を愛していました。

 

子供ってそうですよね…。だから苦しむんだろうと思います。

だって、毒親が親ではなくて単に友人だったら?わたしなら、そんな悪人とは付き合いません。

 他人ならそれで済む話です。

 

この映画は、「なぜ」を取り上げます。

父親がそうなってしまった原因を明らかにしてしまいました。

ここが曖昧なら、この映画は深みが出たんじゃないかなあ、と思います。

その方が現実的だったとも思います。原因なんてまずわからないもののような気がするから。

 

湖の上のボート。

水は青く、天気が良くて、美しいシーンでした。

わたしはあんな風に死にたい。

 

 

 

映画的経験とは何だろう?

ぼくはとても面白いと思ったんだ、君の言うことを。君が書け、と言うからその事を書こうと思う。 

 

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君は「ドクター・フー」の連れの仲間たちが「映画的経験」そのものを表現しているみたいだと書いていた。

そこでぼくは、映画を見るという、ぼく達の経験について考えてみたんだ。

 

現実では、 何らかの状況を見た、ぼくや君は、選択をして行動する。

ところが映画的経験では、自分ならそこへは行かない、と思ったにしても、もちろん、身体は動かない。

 

けれど、映像は状況や出来事を表現しながら、何かを、ぼくに落とし込んでいく。

それは記憶なのだが、ベルクソンだったろうか、「記憶は感情である」といったのは。

感情は、判断だし、選択の方向を定め、信念に展開されもする。

映画を見終わったぼくは、そうした、なにともつかぬ感情の束によって、思考することへと導かれることもある。

 

これは(映画的経験は)、現実的経験から、身体を除いたものであると言えないか?

 

 だから、映画を見るということは、ある種の「経験」には違いないんだ。

 そしてこの新しい映像芸術は面白い契機を孕んでいる。思考を促すイメージの力がある。

 

よくネットの映画感想で、「わけがわからなかった」「難しくて意味がわからない」などという感想を君は見るだろ?

 あれは、正解があると思っているんだ。真理があると思うから、自分で考える事を止めているのか、自分の考えを言わないのか、どちらかだろう。

 

ぼくは思うんだ。正解なんて気にしなくて良いと。思考するということは、ハイリスクハイリターンだ。

映画の隠れた醍醐味なんだと。

 

ぼくは君が「ドクター・フー」を好きな理由がわかる。 

 本来、子供向けのドラマだけに、ドクターの連れたちは、シーズンを通して成長していく。そして終わりには、ドクターから、地球の存亡に関わる決断を迫られるんだ。

一見、笑ってしまうようなシーンではあるけど、子供たちは、世界に対する愛を、信じる事を、得るはずだ。

 

世界は賭けるに値する事を。

 

評判のよくない「15時17分、パリ行き」も、君は青年が屈託のない顔でテロ犯に突っ込んでいくことに、感動していたろ?

世界は賭けるに値する事を知っていた若者に感動していた。もちろん、テロ犯の銃がカチッと言わず、発射されていたら、ヒーローはおらず、テロは成功していた。

そこまで見せてしまう監督は、子供に見せられるように倫理委員会と交渉したらしいが、そこは君が言うようにドクターのほうがまさっていたね。ぼくはここ、笑っているよ。

 

確かに、世界を信じられるから、思考が始まるんだ。

 

普段のぼくたちは、常識的に考える。仕事で、革命的な思考なんてしているわけにはいかない。

 

でもイメージから飛躍する思考はどんだけ壊れかけていようが、しっちゃかめっちゃかでも良いんだ。

 ぼくたちは、イメージ表現という新しい芸術を手に入れたばかりなんだ。

 

 

 

バトルスター・ギャラクティカ、好きだと言って…

ドナルド・D・ムーア製作、脚本。2003年ミニシリーズ。2004年からTVシリーズ。 

 

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「うん。好きだよ。」

「 大好きよ!もちろん!」

 

そう言い合いたいの!

…このドラマについて。(・ ・)

 

 

あらすじ

第二次サイロン戦争はサイロンの一方的な勝利と人類世界の壊滅によって、わずかな時間で事実上終結した。

コロニアル艦隊の主力である宇宙空母(バトルスター)のうち、この奇襲を生きのびることができたのは、ウィリアム・アダマ艦長率いる老朽艦ギャラクティカだけであった。一方、奇襲当時に宇宙空間にいて難を逃れた民間船も、アダマ艦長の元に集結した。

アダマは人々に希望を持たせるため、太古の伝説に語られる13番目のコロニー「地球」を最終目的地とすることを宣言した。また、サイロンも人類壊滅をあきらめてはいなかった。こうして長く困難なギャラクティカと人類船団の旅が始まったのである。

 

このSF戦争、TVドラマは、素晴らしいです。傑作です。 

 

 まず、構想が超しっかりしています。

(初めから4シーズンで終わると決めていたそうです)。

音楽も最高で、撮影も最高。VFXで賞も取ってたかな。

そして脚本が練りに練られています。この脚本の良さが、役者たちを輝かせることに繋がっています。理想的でしょ?

 

 

わたしがどんだけこのドラマが好きかというと、夏になると、夜中、庭でタバコを吸います、わたし。

時々、ギャラクティカの舞台である漆黒の宇宙みたいな空が広がっているのよ。

そうすんと、スターバックがバイパー(戦闘機)に乗って奇声をあげているのが、わたしには見えるの!

 

 スターバック

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スターバックっていうのはコールサインで、彼女はカーラです。このブログを始めた頃、カーラの正体について書いてます。あまりに思い悩んだので…。

スターバックは天才的なパイロットで、(このドラマは「宇宙空母ギャラクティカ」のリブート版です)、オリジナルでは男性が演じていました。

 

オリジナル版のスターバックも金髪で、女たらしなんですが、後半、彼は、超自然的な存在と関わります。

 そういう神秘性をリブート版のカーラにうまく生かしています。

 

 

4シーズン目の最後の方で、アポロが楽しそうにカーラに話しています。

アポロが振り返るとカーラはいません。

緑の草原と青い空が広がっているばかりです…。

わたしは、号泣です…。おかげでカーラが忘れられなくなってしまいました。 

 

ギャラクティカの船内が恋しいです。バイパーやラプターが飛び回る宇宙も…。

 

 個性的で面白いキャラクターがたくさん出てきます。

それら若者たちをアダマ艦長とロズリン大統領がまとめ上げているので、群像劇という感じがあまりなかったですねえ。なんていうかいつもちゃんと視点が定まるようになっていた、というか…。

 

 ロズリン大統領とアダム艦長

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そそ、故郷の惑星に取り残されたヒロとシャロンの恋も平行して描かれてゆくのですが、これがイイんだわぁ。ヒロの一途さがぁ。

そして、これが単なるロマンス要員ではなかったことが最後の最後に分かります。

サイロンが高いビルのてっぺんから、ヒロを眺めているシーンもすきですねえ。

俯瞰で彼の決断をわたしは眺めていました。

 

あと、忘れてならないのは、バルターですね。彼のトンデモなキャラはドラマに厚みをもたらし、神の意思なのか彼の意思なのかはさておき、お話を転がしていきます。

 

自分は悪くないと涙ぐむバルター。

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サイロン無人戦闘機、レイダーの目が赤く光って、音も、怖かったし、レイダーもセンチュリオンの造形も見事なものでした。

 

 

このドラマは最初にミニシリーズの前編、後編を見ないとダメです。

もしかしたら、DVDでは、シーズン1の1話、2話、として収められているかもしれませんが、シーズン1の正式な1話目タイトルは「 33分の恐怖」です。