「三千世界の カラスを殺し 主と朝寝(共寝)がしてみたい」
わーお…。
三千世界というのは、多元宇宙的とも言える仏教の宇宙観を表す言葉。
だから、三千世界は、朝早くからうるさい近所の鴉、ってことじゃなく、全ての宇宙から鴉を殺してしまいたい。。くらいの意味になる。
この都々逸は、高杉晋作の作と言われていて、なじみ客を帰したくない遊女の想いを歌ったものらしい。「主」は、男女どちらの場合でもあり得る。
この都々逸を、わたしなりに紐解けば、
明け方、鴉の鳴き声で目の覚めた晋作は、隣で寝ている遊女を起こさぬように、布団から抜け出そうとした。すると、遊女に腕を捕まれた。
「鴉を、全部、全部、殺したいの」と遊女は言う。
「それでどうするんだい?」と聞いてみると、遊女は更に身体を寄せてきて
「主と朝寝がしたい」と言った。
まぁ、こんな情景を想像するわけよ。
んで、晋作さんは、三千世界って言葉をもってくる。三千世界には、須弥山(しゅみせん)という世界観がある。これが、戯れの情歌に翼を与えた。
この遊女は、可愛い女でもあり、激しくもある女、漂ってくる女の情に、グッとくる。
で、ね。何を長々と喋ってるかというと、このドラマの原作者は、この都々逸にインスパイアされた、と言っているんだ。
ただ、ポスターを見ると、朝寝じゃなくて、共寝になっている。
そして、ドラマを見ると、「主」は女だなぁ、と思う。三千世界の鴉を殺して、お前と共寝がしたい、って。
、、ストーカーっぽい、男の情念みたいな感じ。
んで、このドラマ。確かに恋情にまつわる世界観は面白い。
でも、残念なことに、編集がひどい!過剰に回想シーンを入れて胸キュン不足を補おうとする。台詞にも時々、ウゲェとなった。どうしてこういうことが起きるのかなぁ?だって、中国の映像界は、すざましい倍率の演劇芸術大学出身者ばかりだよ。それぞれの意図が噛み合わないとき、こうなるのかなぁ?分からない。。
それでも一流の役者陣が健闘してるのでわたしは最後まで見た。
あ、そそ。中国時代劇って、「情(恋情)」と「志(仕事)」を二項対立に持ってくる劇が多いんだわ。わたしはそれがとても不思議で…。だって、恋情ほど儚くてもろいものはないよ。それを、頑強にガチンコ対立させるって、、ねぇ。
なんつうか、ドラマみてると、男の価値は、情に溺れず、志しに邁進すること、って通念があるみたいなんだ。でもって、今回のドラマ「三千鴉の恋歌」では、男女逆転バージョン。
女は自分を犠牲にして志に邁進する。
以下、ネタバレ注意!
はてさて?なラストの読み取り。
☝️左からセンと九雲仙人。
「もう待たない」とセンは言った。そして、暗転。
風を写すかのような撮り方、霊灯の前に佇むセン。
彼女は、幽霊なんだと思う。霊灯の中の恋しい九雲仙人の魂に逢いにきた。
彼女も魂になっているけど、霊灯には入れない。
その時、光が霊灯から出てくる。彼女が手を差し伸べると、強烈な光に包まれ、彼女も霊灯も掻き消えた。たぶん、九雲仙人の魂は霊灯を出られた、ってことになる。
暗転、どうやら、センの魂は、5歳のエンエン(セン)に転生したのだと思う。
成長したセンを、九雲はあの手この手を使って、絵の中に呼び寄せた。かつて、重症を負った九雲が隠れ住んだ場所。
センはいったい、どこの世界に転生したのだろうか?
それこそ、三千世界の何処か、多元世界なのか、分からないけど、何度も転生しながら、壮絶な宿命を持っていたセンは、ようやっと、しあわせになれるんだろう、そう思った。
九雲仙人の1000年をかけた恋情である。