メア刑事は、太ったおばさんだ。
ワーク用のネルシャツを着た、男まさりで、ちょっとビッチな、疲れた女。
どちらかと言えば、
「うわぁ。嫌な女だなぁ、メア!」と思ったりもするけど、なんつーか、友達になれる、なんなら親友になれる、そんな感じの女なんだ。
物語は、少女たちの失踪、殺人事件を追って展開する。そこでクローズアップされるのは、事件担当のメア刑事、被害者家族といった何処にでもいそうな平凡な市民たちだ。
ごく一般的な親とその家庭、そういう所にまで、薬物の乱用は広がっている。
事件に巻き込まれた少女たちは、薬中で、薬欲しさに売春をしていた。
観終わって心に残るのは、母親の子供に対する深い愛情だ。
この物語を、メア刑事の存在が極上のものにする。
何処にでもいそうな、くたびれて薄汚れた中年女なんだ。
あるとき、ガイ・ピアースとデートすることになったメア刑事は、メイクをし、髪を下ろした。
メア刑事は扉を開ける。シワを吹き飛ばす強いライトの中に、往年のケイト・ウィンスレットがいた。
☝️ここまで若返って見えたわけじゃないけど、美人女優ケイト・ウィンスレットが一瞬見えた。
その一瞬は、タイタニックを生で見たわたしに魔法をかけた。
それ以降、汚いおばさんのメア刑事を、わたしは、敬意、驚き、愛情、をもって迎える。