タイカ・ワイティティ監督、2016年作。コメディタッチの映画です。
タイカ・ワイティティ監督は、「マイティ・ソーバトルロイヤル」でロキをむっちゃ魅力的に撮ってくれたし、「シェアハウス・ウイズ・ヴァンパイア」はあまりにも面白かったのでわたしをしばらくコメディ映画漬けにしました。
この少年と老人の逃亡劇である映画は、ニュージーランドのブッシュと呼ばれる深い森の中ではじまります。
身寄りのないリッキー少年(ジュリアン・デニソン)は、施設と里子宅を何遍も往復している都会育ちの問題児です。
彼を乗せた車はどんどん森の中に入っていき、開けた小さな農場に着きますが、ぼろっぼろの家があって、そこにはベラとヘクター(サム・ニール)の老夫婦が暮らしています。
農場の暮らしはまず、美味しい食事、(ふてくされているリッキーがお皿の上をフォークで綺麗にこそげ取って、フォークを舐めました)、リッキーの世話がきちんとなされる様子、それは思いがけず豊かな暮らしです。
ベラがリッキーにライフルの撃ち方を教えている時、野生の黒豚が現れました。ベラは豚に飛びかかってナイフで殺しますが、顔が血だらけです。
「美味しい晩御飯が手に入ったわよ!」彼女の輝く笑顔!
仰天しているリッキーがベラに尊敬の眼差しを向けたと思ったとき、カメラが切り替わって土手の上のリッキーの全身を写します。そして彼はユーモラスに気絶します。
わたしはこの一連のシーンが好きです。リッキーの心をベラが解きほぐした瞬間が見られるからです。
3人の農場の暮らしがとても好きなんですけど、残念なことにベラの突然の死であっという間に終わってしまいます。
心を寄せてくれる人を失ってしまった二人がひょんなことから広大なブッシュを逃亡することになり、いつしか互いを見つけていきます。ベラ亡き後、二人の共通点はその寄る辺なさだったのですが、ワイティティ監督はどうしたって予定調和的に愛を二人の身に降り注がずにはおれません。