knoriのブログ

ドラマ、お菓子、写真など

チェオクの剣、ファン・ジニ

 夜道を二人が歩いている。

 青黒い空に、桜が狂ったように舞い散っていた。(2100文字)

f:id:knori:20200717170925j:plain

 2003年制作の「チェオクの剣」です。 ハ・ジウォン主演☝️

 

逃げている男にチェオクが剣を向け、仕留めようとしている。男は、生き別れたチェオクの兄…。

ドラマは、この冒頭の一連のシーンで結末を見せている。

観客だけには、男がチェオクの兄であることが分かる。

 

チェオクは貴族(両班)の娘だった。大事に大事に育てられた7歳の女の子は一夜にして全てを失ってしまう。父親は謀反の罪で殺され、一緒に逃げた兄とは離れ離れになり、彼女は捕まった。

心が潰れそうになったよ、わたし。小さな小さな女の子は奴婢(奴隷)にされ、下働きの女に小突かれながら歩いている。たくさん歩いたのだろう、彼女の足は血だらけだった。

 

 もうどうしようかと思って見ていると、その小さなチェオクは若様に出会うのだ。

12歳くらいの若様は、実は、朝鮮の苛烈な身分制度の中では、半分、と呼ばれる立場。母親の身分が低いせいで、官僚にはなれない。

 けれど優秀すぎて頭一つ抜きん出てしまう若様は、様々な塾を転々としていた。高い身分の子供たちの嫉妬をかってしまうのだ。

 

絶望した少年は、絶望的な不安の中に居る小さな女の子と出会うのである。

 

若様は寺に預けられる。もちろん召使のチェオクも一緒だ。

この二人がのどかな山奥の寺で成長していく映像が、ものすごく心に残っている。

 

若様はこの時のことについて、こういう言い方をする。

「お前が居ると、呼吸ができた」

「お前を守るために強くなる」というありきたりなセリフは言わない。

 

冒頭で追われている兄が言う。

「道のないところをわたしが歩けば、次に続く者が歩く。そうして道はできる」

国の制度を守るお奉行様に「お前は道を誤った」と言われて返した言葉である。

 

おぉ!革命家だぁ!と期待したよ、わたし。

ところが、確かに彼は革命家ぽいけど、義賊に過ぎない。そして、朝廷での党派間の権力闘争に利用されているんだよねぇ。

そらも、ね、早送り、飛ばし、ですよ、わたし。嫌いなんだ、この手の話。

ガンガン、飛ばしまくったよ…。

 

でもって、一番上に書いた、桜吹雪のシーン。

チェオクは若様を守るためには、自分の右腕を切り落とされることも辞さないんだよ。

まぁ、若様に助けられけど、腕に切り傷ができた。

 

桜吹雪の中、若様は腕の傷を確かめて、布を巻くんだけど、こうやって言うんだよ…。

「痛いか…。俺も痛い。」

 

このセリフはわたしはたいして好きってわけじゃないけど、評判になったらしい、ネットによると。

つまり、「俺は死ぬほどお前が好きだ。お前が痛いと俺の心はもっと痛い」つう意味なんよ。

 

若様は、日本でいうところの町奉行の仕事についていて、お奉行様に可愛がられている。若様は、国一番の武将と言われるまでになっている。

チェオクは若様の部下、つうか、正確な身分は奉行所の使用人、だけど、女性の事件のときは、彼女が出向くシステム。チェオクはメッサ優秀な銭形平次みたいになっているんだ。

 

チェオクの少年のような凛々しさって、ね、惚れるよ。すごく良いんだ。

 

で、ね、チェオクは、強盗団を追うんだけど、そこで、兄と出会うんだ。

もちろん、二人は兄弟だってことを知らない。そして、惹かれあってしまう…。

 

チェオクは兄を逃す。

そのとき、若様の視線の先ですべての音がとまる。

彼の生まれて初めての嫉妬を…描いたシーン。

いいなぁ…良かったよ。ありきたりな表現でも必然的だと感じさせるものは良いんだなぁ。

 

この身動きが取れない身分制度の中で、チェオクってば、自立しているんだ…。

…それは、三人の愛の悲劇でもあったんだけど。

 

 

 2006年制作「ファン・ジニ

f:id:knori:20200717171140j:plain

ハ・ジウォン☝️

 

チェオクことハ・ジウォンに惚れたわたしは、続けて視聴。

このドラマ、早送りも飛ばしもしなかったよ。面白かった。

 

彼女は日本で言うところの芸妓。奴婢という身分。

彼女が踊るシーン。

彼女は、空気をまとうような、しっとりと柔らかな動きを持っている。

それがとても好きだった。


 彼女の初恋は16歳くらいの頃。18歳くらいの貴族の少年が彼女に恋い焦がれる。

妾にするならまだしも、彼は彼女を妻にするという。二人で逃げても見つかれば死罪になる。

少年の愚かな恋の信念はこうだ、

「真心で説得すればみんなに分かってもらえる」。

 

…しかし、だ。わたしはこの愚かさが愛しい。だって、この愚かしい真心、というものは、世の理(ことわり)の泣けてくるような根本ではないの?

 

死んでしまった少年の遺体を乗せた荷車が、娼館の前で動かなくなる。あぁ、この話、知っているなぁ、と思いながら、わたしは…号泣 すよ。 

 

その後、大人になった彼女は、二度目の恋をする。

あの少年のような、そしてもっと賢くしたような貴族の男と。 

 

この三人、少年、貴族の男、彼女は、ロマンチックラブによって、世の中の仕組みから飛び出す自由な心を持った男女なのだ。

 

しかし、

貴族の男に、彼女が言う。彼女は彼ではではなく仕事(芸)を選んだ。

「互いを抱きしめるかわりに、自分が心をくだく物事を抱きしめましょう」と。

 

二人が、亡くした子供を見送るために琴と笛を奏でる。二人の決別のシーンでもある。

そのとき、わたしは、未練心があふれてきて… 自分でも首を傾げてしまう。