マッテォ・ガローネ監督、 2015年。
ロングトレリス王は、美しい王妃を愛していた。
しかし王妃は、彼の亡骸には目もくれない。
王妃が抱きしめているのは愛の亡骸。ロングトレリス王の今際の際の微笑みは彼女に届かない。
seicolinさんのレビューでこの映画を知った!美しいイラスト付きのレビューです❣️
原作は『ペンタメローネ』。
グリムなどにも影響を与えたと言われる最古のお伽話集。
作者のジャンバティスタ・バレージはルネサンス期に活躍した人で、シンデレラ、白雪姫も書いている。
これをイタリア人監督が映画化した。
もちろん、お伽話といっても、17世紀ごろの民話を元に作られているので、子どもだけをターゲットにして書かれてはいない。エロ、グロ要素が入ってる。
わたしはこの監督さんを知らないのだけど、前身は画家だったそう。
ロングトレリスの王妃。
この映画は、ロケ中心に撮られた。
中世のイタリアを歴史の重みと共に、美しい絵柄で綴った。
物語は三つだ。
子どもが欲しい王妃、
勘違いから好色な王に見染められた老婆とその妹、
白馬の王子さまに愛されたい王女と巨大なノミに愛情を注ぐその父王。
展開される場所も違うこれらの物語を繋いでいるのが、大道芸人たち。トリックスター的役割を担っていると思う。この映画の象徴的な存在になっている。つまり、お伽話にそなわっている、ある種、普遍的で潜在意識にうったえかける濃厚な雰囲気を現しているのだ。
メタファー的でもある。
はじめに道化師が頼りなげに歩く足元が写り、終わりは綱渡りの炎が上がる細いロープの上の曲芸師だ。
道が示され、危険な領域の見事なバランスで終わる。
わたし、わからないんだよね。
ロングトレリスの王妃、彼女が息子の親友を嫌う理由が。
おまけに愛を忘れた彼女は息子に執着する。
しかし…彼女の亡き骸は美しかった。音楽すら横たわる彼女に寄り添っていた。
老婆たちは…彼女たちの心根は醜い。可哀想なんだけど…。
白馬の王子さまを夢見ていた王女は、鬼に嫁がされる。
無力だった彼女は周りを巻き込み犠牲にしながら、パワーを手に入れる。
まったく、他に道はあったろうに、彼女たちは、何にそんなに執着してるのよ!ねぇ…。
王妃の子どもの親友は、王妃から逃げて、別の村で家族を持った。彼の妻は、愛おしそうに彼を抱きしめていた。
その女は、ただ、目の前の愛を抱きしめているのだ。
それが心に残る。
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エンドロールの絵が美しくて最後まで見たよ。