誰も見ない

ちょうどお茶を飲み終わった時だった

 

「そうだ!裏に桃色の花が咲いてるよ。」Rは、発見者として得意げな顔をわたしに向けた。

そりゃそうだ、とわたしは思う。10年前からあすこにあって、毎年、可愛い花を咲かせる林檎の木だ。Rもそろそろ気がつくはずさ。

目の前にぶら下がっている藤の花にも気がつかなかったRである。

 

寂しげに桃色や薄紫が揺れ、木の葉も頭を垂れた。

だいじょうぶだよ、可愛い花木たち。

わたしが見てる。