カルメン純情す

木下恵介監督(1952年)モノクロ。「カルメン故郷に帰る」の続編として作られたもの。

 

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 困ったことにカルメン高峰秀子)が馬鹿な女の子に見えない。

芸術家の須藤(若原雅夫)が彼女のことを「頭の悪い女」と言うので、やっと世間からはそう見られているキャラなんだと了解した。

 

カルメンは浅草のストリッパー。親友の朱美(小林トシ子)が赤ん坊を抱えて転がり込んでくる。男に捨てられたらしい。

 

この映画はカルメンの誤解に基づく!純情な恋心をコミカルに綴ったもの。ではあるが…木下監督はこれに加えて社会情勢を斜に構えて映し出す、ということをやっている。…まじで画面が斜め!(ちょっとカッコイイし、なんというか映像がオシャレ!)。

 

まず、カルメンは芸術家の須藤のヌードモデルを引き受ける。

彼の婚約者の母親、熊子(三好栄子)が、(最初、男かとおもった。髭が生えてるんだよ!)、保守政党の党首らしい。

 

で、親友の朱美を捨てた男というのが、アカ、共産主義者らしい。

 

 世の中は、再軍備の政治闘争で揺れていた時期、らしい…。(自衛隊を作るかどうかの騒ぎがあった時代だと思う)。

 

 保守党の熊子議員は、須藤に応援演説を頼むのだけど、「僕は、どっちかっていうと、再軍備は反対なんですけど」と言われて、「かまへん。適当にやっとけばいい」とか言うし、君が代に胸を熱くしそうなすごいすごいすごい漫画よりすごい女代議士。

 

共産主義者の男は、自分の子供を平気で捨てて、理想を語る。(いっさい、援助をしていない)。

 

とまあ、こんな感じで、木下監督は、政治家、政治闘争に明け暮れる者たちを皮肉っているが、彼らのシーンでよく、現代音楽みたいな不協和音ぽい音楽が流れて、何かしらの不安感が漂っている。

 

で、肝心の主役のカルメンだけど、これがむっちゃ魅力的!!

最後の台詞、一個だけ、気にいらないのがあったけど、誰よりもマトモ!なことをポンポン言う。

現代に通用するキャラだと思う。全く古さがない。

 …多分なぜかと言うと、確かに彼女はど貧乏で底辺のその日暮らしをしているのだけど、監督はカルメンを、そういう愚かな底辺の女としては描いていない。

カルメンを社会の暗黙のルール(規範)から外れた存在として映し出している。

こういう疎外された存在なんて現代映画の定番だし。

 ルールから外れているから「彼女は頭が悪い」と、みんなは思うんだろうな、とわたしは思ったよ。

 

カルメンはストリップを芸術だって言う。「ヴァレリアン」のダンサーも自分はアーティストだ、って言って死んでいったなぁ。 

 

たぶん、彼女なりの矜持なんだろうなあ。 (なんというか、こういうの弱くて。泣けるんだ。)

 

なんせ、高峰秀子、可愛かった!

 

 

#️⃣

「お嬢さん、乾杯!」なかったから、この映画借りた。前編は置いてなかった。

でもわたしよく考えてみると、見てるのかもしれない、コロンと忘れてるだけで。

 

#️⃣

iPadをアップデートしてから、Safariのセキュリティが強化されたみたいで、クッキーなど、いろいろ無効にしてみたけど、いまでも、スターやサムネイルが表示されたり、されなかったり。Chromeとか入れたくないなあ。