ニール・ブロムカンプ監督、脚本、原作。2015年。
ブロムカンプ監督(ヨハネスブルグ出身)は、 29、30才の時に初長編「第9地区」を作りました。
これがヒットして、次はマット・デイモンなどの有名俳優が出た「エリジウム」を作ったわけです。
この監督の作る映像には見る者の感情を揺さぶる力があります。
作品に観念を感じるというか、(わたしはこの手の監督に強烈に惹かれるんですが)、それが映像にパワーと奥行きを与えているような気がしています。
「第9地区」は低予算で、主演俳優は素人でした。監督は、若い時(14、6才)から、アニメをやってきた人のようです。
それゆえ(たぶん?)、彼の作る映像には優秀な俳優が必要ない、というか、表情のある素人で十分だし、マットが主演した「エリジウム」を見ると、存在感のある役者は邪魔なんじゃないかしらん、という印象を持ちました。
また…上記の両作品にいえることなのですが、「おっもしれぇー!」と思いながらも見終わってみると、どこかB級作品っぽい安っぽさが漂うわけです。
たぶん、どこか風刺的な…とか、嫌味、皮肉っぽさに堕してしまう、それは彼の若さゆえなのか、そういうニュアンスが作品の格を落としているのではないかとわたしは思います。
で、彼の3作品目、「チャッピー」です。
こざっぱりとしました(洗練されてきたともいう)。彼の良さが失われたのかぁ、と思いましたが、最後の最後に彼らしさが出ていると思いました。
この映画は、AIが意識を持つという技術的特異点にまつわるお話です。ほぼ、ユーモラスに綴られていきます。
主演はAIのチャッピーです!そして、赤ん坊同然のロボットであるチャッピーを育てるのが、ヤクザというかチンピラのカップルです。⬇️
この二人は、「ダイ・アントワード」というケープタウンのラップグループのボーカルです。 演技は素人同然ではないでしょうか?
⬆️彼女はチャッピーにママと呼ばれているんですが、彼女に絵本を読んでもらっている時に、彼は、ママンの愛情を深く理解するシーンがあります。
彼の魂が揺さぶられたのが伝わってきます。
それを監督は、ロボットの視線を微妙に絵本から外し、ママンの絵本を読む声が遠のく事で見せてしまいます。(この監督に上手い役者はいらないわけです。アニメ的なんでしょうか?)
最後のシーンでは、わたしは悲しみが溢れてきました。けれど、人によっては、感動した人もいるだろうし、嬉し涙を流した人もいるでしょう。
この多義性はブロムカンプ監督の良さだろうなあと思いますん。