All About Steve / ウルトラ I love you

フィル・トレイル監督、 キム・バーカー脚本。2009年。

 サンドラ・ブロック、ブラッドレイ・クーパー。

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原題は「スティーブの総て」。

馬鹿げた邦題は無視!したいが、そうもいかない…。

そしてこの映画は、ドタバタ喜劇です。ラブコメではない!

ブコメじゃないと思ってみれば、この映画の評価は違ってくるのじゃないか、と思うわけよ。ラズベリー賞を受賞した最低映画という評価から…。

 

この映画はサンドラさんが製作も兼ねている。脚本を高く評価したんだと思う。だから、ベリー賞の授賞式で、「あなたたち、この映画ちゃんと見てないでしょ?」と彼女が言いたくなったのもわかるんだ。

 

 

個性を歓迎しない社会を生きてできる心の空白

ラストのメアリー(サンドラ)の独白だ。

 

この映画は、軽度のサバン症候群発達障害と診断されてもおかしくない30歳くらいの女性の物語。

ブラインドデートの相手を、会って数分でババっと服を脱いで襲ったり、もう、あっけに取られて見てるわけ、わたしは。ちなみに場所は、彼女の両親の家の真ん前の…車の中です…。

ま、さ、「ちょっと待ってね」、とか言って、ススっと服を脱いで、「どうする?」とか言って微笑む、とかとかとかのぉ、状況じゃない!

文字通り、ぎゃわん、って襲う。クーパーを。初々しく輝いている彼を。

おまけに!なけなしのセクシーな雰囲気を蹴散らしながら、ベラベラ、ベッラベラ、喋り続けるのよ、彼女。

 

決定的なのは、バスに乗ってクーパーに会いに行くんだけど、そのバスの中で、たぶん1時間くらい?誰に話すでもなく、みんなに聞こえる声で、ずうううううううううと喋っている。

あ、これは、病名がつくわ…とわたしは思う。

 

そういう「個性を歓迎しない社会の中で、個性的すぎる、女性」の片思いの物語なの。

 

ある意味で、先進的過ぎた映画、というか…。

つまり、映画の中で彼女の病名は出てこないし、周りも、彼女を個性的過ぎる、としか思っていないわけ。

普通は、周りの理解や助けを借りて、ちょっとだけ周りと違う女性が一生懸命に生きて恋もして、ってあったか系の映画にでもすると思うけど、これを、完全に個性であると捉え、ドタバタコメディにしたわけよ。

全く、線引きがないの!差別意識のかけらも無いの!この映画には。

自分とは違うものを受け入れる、というような視点がない。違いは個性なのだ。彼女はちょっとだけ個性的な普通の人なのだ。

 

この映画では、彼女の両親でさえ、彼女を理解している風はない。愛してはいるけど。冒頭、彼女の仕事の上司が個性的過ぎる彼女に「普通になれ」と言う。

後半、彼女の行動によって、彼女を包む暖かい眼差しが描かれるけど、これも、個性の理解というより彼女の人柄を見る人々との出会いとして描かれる。

 

暴風雨で顔にぶつかってきた虫をつまんで、怯えながらも、虫の学名をペラペラ述べてしまう。

そんな彼女は、名言を吐きます。

 

追わなきゃいけない相手なら、そもそもその人とは縁がなかったのよ。

 

 

カメラマン役のクーパーとそのクルーの三人組がメッチャ愉快!

コメディ映画としてイッパイ笑えます。

 

 

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赤いブーツしか履かない30ちょい過ぎの女性を演じたサンドラは、この時、45歳!

わーお!