イフ・アイ・ステイ/人間的な、あまりに人間的な

 少しだけ違っていたのは、

彼女は才能があり、めっちゃんこ可愛いらしかったのです。

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ラブストーリーだった…。違うと思ってたのよねぇ。

さすがに…年を取ると、子供の恋愛というものが退屈で寝かけた。

けれど、主役のクロエ・グレース・モリッツに惹きつけられ、ホワホワと最後まで完走。

 

母親がクロエに頬を寄せる二人のバストショットでは思わず絶句…。

いきなりクロエの頬がパァーッと透明に輝いたのだ。…むごい対比の効果である。

 

R・J・カトラー監督。2014年。

クロエ・グレース・モレッツ

 

ミアは17歳の高校生。チェロ奏者を目指す彼女は、仲の良い家族や親友、そして愛する彼氏に恵まれ、幸せな人生を歩んでいた。しかし、そんなある日、ミアと一家を乗せた車がスリップ事故を起こし、彼女以外の家族は全員死亡してしまう…。Wiki

 

個性的で魅力的な女の子が活躍する物語は多い。そんな中にあってクロエは平凡なのだ。キチンとしていて家族を愛していて、将来についても時々、考えている。実のところ、多くの女の子は、クロエみたいなんだと思う。

少しだけ違っていたのは、彼女は才能があり、めっちゃんこ可愛いらしいということだ。

  

たまたま、そう生まれついた特質である美貌と才能。 美しい顔やなんの形にもなっていない才能はその人にいきなり自信を与えるか?

そうではないだろう。それぞれの研鑽なりの記憶が積み重ねって、それをもたらすと考える。

 

クロエは夢現つに、過去を見る。5、6歳の頃から夢中になってチェロを弾いていたこと、緊張のあまりプッツンしかけていた実技試験の練習に家族が付き合ってくれたこと、そうしたものがクロエの矜持を作っていったのだ。

 しかし、面白いのは、他人は「特質」の虜なのだ。「いいね、才能があって」とそれ自体では何の役にもたたないものを称賛するのである。

 

 

例えば肌の色だってたまたま生まれ持った特質の一つだ。

 美貌や才能や肌の色といった特質、頭脳明晰な特質、ボケ頭である特質、そのものに良いも悪いも羨望も失望も、何の価値もありはしない。

人にモテたい、特別になりたい、高学歴になりたい、という社会的な常識がなければ、特質は脚光を浴びない。

こうした世間のしがらみをバッサリ落とすと、そこにあるのは自由だと言っていい。

過去が刻んだ趣向は沈み込み、わたしは、ここに、いる、だけである。澄みきって、何もない。