お風呂でも本が読める、と私は思う。
これは、読書を諦めたくはないが、諦めてお風呂に入らなければいけない、という最高のジレンマに対するわたしのエキスキューズだ。
濡れた手でページをめくり、本がふやけてくるが、お湯はピンク色だし、フルーツの香りが漂っている。
わたしはお風呂が好きだ。
……お風呂に入るのは好きだ。
コタツで丸くなっているわたしは「今日はお風呂に入らない」と呟く。
「そんな日もあるよね」と隣のRが言う。
彼は分かっていない。わたしはお風呂には入りたいのだ。
わたしはお風呂に入った後、裸のまま、すぐにお風呂掃除をする。
脱衣所も掃除する。Rが飛び散らかした汚れは、わたしの入浴後は綺麗さっぱりピカピカになる。
だから今日みたいに疲れ切っている深夜には、お風呂に入りたくない。つまり風呂掃除をしたくないのだ。
「明日、掃除すればいいよ。」
彼は分かっていない。
わたしは入浴後は掃除をしてしまわないと気が済まない。
入浴すれば、どんなに疲れていてもやらざるを得ない。
風呂掃除を逃れるために、わたしは入浴できない。
どうよ?もっすごく理屈が通ってるでしょ?
私はみかんを剥いた。