ボヴァリー夫人とパン屋

アンヌ・フォンテーヌ監督。 2015年フランス映画。 原作はポージー・シモンズのグラフィック・ノベル。

 

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ジェマは首を伸ばしてパンの匂いを吸い込んだ。

白いうなじの後れ毛に光があたっている。

マルタンは息が止まる…。

 

 

ファブリス・ルキーニマルタン役、ジェマ役はジェマ・アータートンです。アータートンにはびっくりしました。「人生はシネマテック」の彼女とは別人!にしか見えません。

 

この映画は原作者がイギリス人です。(原作は未見ですが、映画を見る限りでは)、ギュスターヴ・フローベールボヴァリー夫人』のパロディなんだろうと思います。

 

パン屋のマルタンは退屈していました。彼は出版社に勤めていたのですが、まあ、夢を見て、田舎に戻ったわけです。 そこへジェマ・ボヴァリーとその夫が引っ越してきました。

映画はこのマルタンのジェマに対する妄想まみれの関心から成り立っています。

 

まあ、わたしに言わせれば、マルタンフローベールです。

フローベールマルタン)がジェマを見つめながら妄想に浸りながら物語を紡いでいくわけで、これはイギリス流の皮肉を感じます。そして映画全体は名作古典のパロディであると…。

 

 

パン屋に入ってくるアータートン、暖炉の前の彼女、ウットリするほど魅力的です。

彼女の物憂げな表情は美しい肢体を無防備にさらけ出します。非常にエロい!

監督はこのエロの裏にコメディを貼り付けているんです。こういう女の隙ってエロいでしょ?と。これにマルタンが目をまん丸に見開いて応える。ところどころ、笑ってしまいました。

 

 

あと、ラストのオチ、こうなるだろうな、という予想通りに終わりました。

 マルタンの異常な彼女に対する関心はストーカーに限りなく近いんですが、それに気がついているのは、彼の奥さんと息子だけで、他の人は全く気がついていないのです。彼は釣った魚に餌をやりわすれています。

 が、

ラストにさり気なく示されるマルタンに対する息子と奥さんの眼差しが、監督のアイロニー、わたしの彼に対する嫌な気持ちを、笑いと共にひっくり返します。わたしはフローベールを可愛いとさえ思っていました。

 

 

 

 原作のグラフィック・ノベル

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この映画はフランスで4週連続1位だったそうです。